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講演「北韓の都市と建築」に驚愕!

北朝鮮の建築ってどんなんだろう。
数年前にベネチアビエンナーレ建築展の帰国展示で見たことがあるが、北における建築の流れについては考えたこともなかった。
そんな中で、「北韓の都市と建築」についての講演があるということで、さっそく参加してきた。

講義の開始時間には間に合わず、今回聴いたのは第2講「社会主義建築と金正恩の建築、その間」。
講演を担当するのは、なんと脱北者。「前・朝鮮労働党財政経理部39号室大成総局」という肩書きだった。朝鮮労働党の出身者ということで、北関係のニュースに出てくるような人を想像したが、30歳前後の韓国の普通の会社員を思わせる若い雰囲気で驚いた。会場からも驚きの声が上がっていた。

講義は北朝鮮の代表的な建築物の写真を見せながら説明を加える形で進められたのだが、印象に残った内容を書くと

・北の建築は100年後を考えて計画される。
・多くの建築物の名称に「人民」という言葉が入るが、人民のことを考えて建てたものはなく、最高指導者の気に入るものしか建てられない。

そして、彼が終始主張していたのは、「南の建築家たちは、統一されたら北でどんな建築を建てようかと思っているかもしれないが、北の人たちが望む建築を設計してほしい」ということだった。
彼の話によると、北の建築は、北の人民がその建物の形を見たらすぐに何の建物か分かる形をしているのだという。
たとえば、アイスリンクは毛糸の帽子の形だったり、学校は両手を広げて子供たちを迎える人の形だったり、科学館は原子の形をしていたり。
それに比べて南の建築は何の建物か分からないというのだ。南が北に建てた競技場もあるけれど、「美しくないので不評」なんだという。

後で質疑応答の時間に、建築家のファン・ドゥジン氏が、南でもかつてそのような試みがなされたことを説明し、それがあまりにも短絡的すぎると指摘した。それでも、ファン建築家は、それを北の民の率直な意見として受け止める必要についても強調していた。

講義を聞いていて思ったのは、南の人と北の人では建築に対する考え方がまったく違うということだった。
そして、それ以上に強烈に印象に残ったのは、その北出身の人の主張の強さ。「今のような南側のアプローチは間違っていますよ」といわんばかりだ。「最後に一言」といわれて「議論ばかりしている時ではありません。行動を起こすことが大事です」と訴え出す始末。そして、話をする目的意識がはっきりしているのを感じられる。頭もよさそうだし、訓練されているようにも感じる。これにはほんとうに驚いた。

このように主張が強いのは、彼自身の性格なのか、北の人たちがみんなそうなのか、いろんな修羅場を経験してきて切迫感を持っているのか、それは私には分からない。
それでも確かなことは、統一に向けての歯車が動き出した今、このような人々が隣人となることを想定して準備をしなければならないということだ。

うーむ、単なる建築に対する関心から来たのに、こんなに考えるようになるとは思ってもいなかった。
このような場を持とうと考え、実現した関係者の方々に敬意を表したい。

これから12月まで6回にわたって講演が行われるという。また行かねば。

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by matchino | 2018-07-25 22:48 | 建築 | Comments(0)
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