金海空港から半分意地になって訪ねた大邱美術館。
草間彌生の展示なのだけれど、最近どこかで読んだのは、ある美大で学生に嫌いなアーティストを調べたところ、草間彌生が上位3位以内に入っているんだそうな。 まあ、若いもんたちがどう思うと関係ないのだけれど、実は私も「わざわざ見に行くか?」という気持ちがあった。カボチャはいろんなところで見ていたし、ほかの作品も雑誌やなんかで見飽きるほど見ていたので。「意地で見に行った」というのはそういう意味が含まれているのだ。 で、結論としては見に行ってよかった。 でも、微妙な「よかった」であることを断っておきたい。 この展示は「オミホール」という吹き抜けの空間に赤い水玉のボールがいくつも浮かび、各展示室では絵画作品や鏡を使って永遠性を表現したインスタレーション作品などが展示されている。 ![]() まず、一番気に入ったのが、原色で描かれた絵画作品だ。草間氏が見たイメージをそのまま写したのだろうか、人なのか動物なのかよく分からないイメージが描かれているが、造形的にも興味深い作品たちだ。昔、うちの娘が描いた絵にも通じるようで、幼い子供のような豊かなイメージを高齢になっても残している人なのかと思った。 あとは、まとまった形で草間氏の作品に接することで、「この人の芸術って何なんだろうか」ということを考えさせられる機会になった。 ちょっと(「そうとう」というべきか?)変わった人の個人的なイメージに過ぎないのに、こんなに世界のアートシーンの中で注目をされているのはなぜなんだろうか?共感できる部分が、皆無ではないにしろ、大きいとは思えないイメージなのに。 あと、この人がどういう意図を持って作品の制作をしているんだろうかが気になる。強迫観念という言葉がキーワードになっているが、どういうことなんだろうか。 草間彌生という人は何なんだろうか、という宿題を出されたのが今回の展示だった。そういうことを考える機会になったのがよかったかな、と。 ![]() それにしても、大邱美術館側はどういう意図でこの展示を企画したんだろうか? ひねくれた考えかもしれないが、「人集めのための展示じゃないだろうか」とか思ってしまう。 部屋に水玉のシールを貼らせる企画とかは子供だましっぼいし。これは子供のための企画ではあるけれど。 オミホールの展示も、想像したとおりの展示で、もう少しびっくりさせてくれるようなものが欲しかったなあ、とか。まあ、エンターテイメント性ばかり要求してもしょうがないけれど、前回のチェ・ジョンファ氏の展示の方がインパクトがあってよかったなあとか。 あ、もう一つよかったことがあった。 いろんな所で何回も見ていたあのカボチャを、今回はちょっとよく眺めてみた。 すると、よくできたデザインだなあと思えた。やっぱり並外れた造形力を持った人であるのは間違いないなあ。 ![]() 〈追記〉 この投稿を書いておいて温めている間にいろいろな記事を見て考えたことがあったので、追記という形で記しておこう。 まず、美術館側の意図の話。 大衆にもよく知られた作家を扱うことで、美術に対する大衆の関心を高めるという意図と、この展示と同時に大邱の作家たちとの作品を展示することによって、地域の作家に接する機会を作ったということだった。 まとまった企画展だったし、同時代の作家だし、正当な美術館としての役割を果たしているという印象を受けた。 印象派の展示ばかりやってるどこかの美術館とはやっぱり違うんだよな、と。 それからもう一つは、草間彌生の芸術って何なのかということについて。 前回も紹介したひゃんりさんが、大分市立美術館で行われていた草間彌生展での美術館館長の話をまとめているが、それを読んで、ポップアートの先駆的な人だったんだということが分かった。 マリリンモンローのシルクスクリーンだとかアメリカンコミックを拡大した絵なんかが、あまりにも見慣れていてその価値が分からなくなっていたように、あの水玉も、あまりにも世間に溢れかえっていて、その価値が分からなくなっていたのかもしれない。 で、さらに考えていくと、芸術ってなんなんだろうっていうところに疑問がまた戻ってくる。また、アーティストと専門家と大衆との関係についてもいろいろと考えることが多くなってくる。 大邱美術館は、そういうことを探求し、模索しているのかもしれないと思えるようになってきた。その模索が次にどんな展示となって現れてくるのか期待したい。 ![]() 〈追記の追記〉 愛読しているメルマガの「デジタルクリエイターズ」に、以前、草間彌生展に関するチャット対談があったことを思い出した。 それが私の考えた内容にかすっている感じがした(この人たちは専門家だから、私の方がかすったというべきか?)ので、リンクをつけておこう。 ■
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by matchino
| 2013-11-02 20:15
| 展覧会
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Comments(4)
読みました。
いつのころからでしょうか?水玉?草間弥生がこんなに浸透したのは? 本人より、たぶん作品のインパクトなんではないでしょうか。 見る側が作品の何を意図しているかを考えるより先に、水玉模様、赤、白、黄色い南瓜という非常にわかりやすい媒体を提示している。 そこに、芸術作品がわかった。共感できる=親しみやすいと。こんな図かな? 得てして理解しようとすると難解な作品が多く感じられる中、草間弥生さんは(もちろん中身は色々な思考があると思いますが)わかりやすい。それが世界中に広がったのかな~。 ミュージアムグッズに殺到する皆さんをみて、流行ってのあるけれど理解しやすいんだと思いました。単純にね。 しかし。。。商業的にはやはり【困ったときの草間弥生さん】と言われるぐらいですから美術館としては取り上げやすいし、年齢問わず触れやすいんではないでしょうか。水玉すごいね。
こちらへのコメント、ありがとうございます!
そういわれると、確かに分かりやすいですよね。「きれいなデザインー」とか、「水玉すげー」とか。 なんか私が難しく考えすぎだったかもな、と。考えすぎてわけわかんなくなってしまったんでしょうね。 今回はひゃんりさんにたくさん助けられましたー。^_^
草間彌生ですねぇ。。。
ワタシは、あまり好きではないんですね。 そもそも、水玉模様に興味がないのと、その水玉の「ぶつぶつ感」が生理的に無理なのかも。 点々って、それが「つぶつぶ」に見えるか、「ぶつぶつ」なのかによって、大きく違ってくると思うんです。 「つぶつぶ」だと可愛らしいし、「ぶつぶつ」だと気持ち悪い。 (ワタシだけ?) 草間彌生の水玉って、その「つぶつぶ」と「ぶつぶつ」の間のギリギリのラインにある気がします。 そこがスゴイところなのかもしれませんねー^^
citronさん、「ぶつぶつ」と「つぶつぶ」…確かに! 的確な表現ですね。^^
草間さんの作品は「ぶつぶつ」と「つぶつぶ」の両方がある感じですよね。まあ、どちらにしろ、水玉がずっと見えてたりしたらたいへんです。それを作品に吐き出して、なんとか精神を保ってたんですかねえ…。 世界的に認められて大成功してるけど、本人は幸せなのかな?とか。
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