大邱のブロガーツアーを取材しに行って、終わったその足で大邱美術館に取材に行って来た。
行けないかも知れないと思っていたけれど、行ってきて本当によかった。こんな美術館、なかなかない。 車で送ってくださった大邱市の職員の皆さん、ありがとうございます! さて、行く前から調べていって、街の中心から遠いということは分かっていたが、車はどんどん山の中に入って行く。 気持ちよく伸びる道路をドライブ気分で走っていくと、新緑が美しい山の中腹に近代的な建物が見えてきた。 シンプルな長方形の建物の上に「d am」の文字が乗っていて、遠くからでもここが大邱美術館なのだということが分かった。 でかい。敷地面積が7万平方メートルの市立美術館としては最大の美術館なんだそうな。 大邱市の皆さんにお礼を言って車を降り、入り口に向かった。 長方形の建物の右の方には屋根の上から四角い木箱が滝のように流れ下りて、単調な外観にアクセントを与えている。 広い前庭で何枚か写真をとって、入り口にたどり着いた。入り口は二重になっていて、外側のドアを開けると大柄な警備員が威圧するように立っている。…と思ったら人形だった。チェ・ジョンファ氏の「ファニー・ゲーム」という作品で、交差点に立っている警察官の人形の本物を苦労して探して来て作品にしたとのこと。偽物であり、本物であるというパラドックス的な作品だ。この作品は館内の至る所に置かれていた。 これは2階のやつ 内側のドアを開けてもう一度驚いた。ピンク色に輝く、羽の生えた巨大な豚の風船が目の前に立ちはだかっていたのだ。 豚の下には木箱が敷かれ、その上にプラスチックで作られた安物の日用品が並べられている。作家が世界を旅行をしながら集めたものたちなのだという。これらが美術館に整然と並べられると意味を表してくるようで不思議だ。 これはチェ・ジョンファ氏の「錬金術」という企画展の作品。キッチュな色合いとバロック建築のような不思議な神聖さが私の好みだ。 ロビーを抜けると広い長方形の空間が開けていた。3階まで吹き抜けの空間で、「オミホール」と名付けられている。「オミ」って何だろう?英語かなと思ったが、後で調べてみたら、動物の母親のことをいう韓国固有語の「어미」なんだそうだ。作家たちの実験的な作品を展示する「インキュベーター」的な役割をするんだそうな。 で、ここでもう一回驚いた。オミホールの真ん中に巨大な作品が吊り下がっていた。 「錬金術」展の「カバラ」という作品だ。緑と赤のプラスチックのザルがつながって、巨大な一つのオブジェとなっている。 これを見て思い出した。何年か前にアートソンジェセンターのカフェでこの人の作品を見たことがある。その時もザルだった。 先ほどの日用品を使った作品といい、一つひとつは消費社会の権化のような安物だが、こうしてインスタレーションとなると何か曼荼羅のような崇高な雰囲気さえ帯びてくる。 オミホールの脇にはピロティのような空間があり、そこにもインスタレーション作品がある。同じ作家の「錬金術」という作品。ザルなどの容器を組み合わせた作品だが、真ん中のやつよりは色も形も多様で美しい。まさに錬金術だ。 それにしても空間の使い方がすごく巧みだ。もちろん、作家がこの空間に合わせて制作したのだろうが、それだけではない気がする。国立現代美術館にも長方形の吹き抜けの空間があるけれど、こんな使い方はしないだろうなあとも思う。 オミホールの横には幾つかに区切られた展示室があり、「DNA(Design and Art)」展が行われていた。美術作品でありながらデザイン的な要素が入っている作品を集めた企画展で、最近話題になっている韓国の作家たちの作品をデザインという角度で照明を当てていた。 ここで出会った嬉しい面々は、ハ・ジフン氏とチェ・ウラム氏。 ハ・ジフン氏の作品は、鏡のように周りの景色を映し出す、樹脂で作られた座椅子の群れ。以前、徳寿宮プロジェクトで見た作品で、今回は透明な物も混ざっていた。 チェ・ウラム氏は架空の動植物のようなキネティックアートを作る作家で、今まで何回か彼の作品を見たことがある。薄暗い部屋の中で光を放ちながらゆっくりと動く花のようなやつと、深海魚のようなやつ。 動物のように少しは意思の疎通ができそうでありながら、やはり動物のように何を考えているのか分からないような感じも受ける。その形状はある意味でSFに出てくるような架空の兵器のようにも見える。しばし、物を言わず、意思も持たないオブジェと無言の対話をしている自分があった。 そしてもう一つ、気になった作品は、キム・ヨンソク氏の「チョクトリについての100通りの解釈」という作品。 100通りのデザインのチョクトリがガラスケースに収められている。美しい。一つひとつも美しく、これが並べられていても美しい。 なんだかこの美術館、作家の選び方から展示の仕方、企画展のコンセプトまで、不思議と私のツボにしっかりはまっている。 普通の美術館だし、外国の有名な作家の作品がどーん!というようなものでもないのに、一つひとつに満足できる美術館という感じ。 で、それがなぜなのかということは、後で調べていて分かってきた。 ということで、その秘密と続きはまた次回。
by matchino
| 2013-06-01 22:25
| 展覧会
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