普光洞(ポグァンドン)の古いアパートに gana アートギャラリーが新しくオープンした。 漢南洞・普光洞を歩いた時に気になっていた 「チュミアパート」というアパートだったので、 これは見逃せないと訪ねてみた。 普光洞でひときわ大きな存在感をみせるチュミアパートは、 1973年に建てられた。 1、2階は商業施設、その上は住居となっている、 いわゆる住商複合アパート。 もともとはホテルとして建てられた建物を、 何かの事情があってアパートになったという曰く付きの建物。 周辺の街も、10年以上前から再開発の話が出ては消えを繰り返している、 そんな庶民的な街なのだ。 そんなアパートの一角をギャラリーにするなんて、ganaも面白いことをする! で、どこが入り口なのかと探してみると、建物の角に金属製のきれいなドアがあった。 その脇にはgana artの小さなロゴ。 これは他の日に撮った写真 でも、ドアは閉まっているし、 前の階段には数人のおばあちゃんたちが座って日向ぼっこをしている。 え、休みなの…?そんなん聞いてないよ…。 と思いながらも、ドアの前に行ってみると、 ドアノブの下に小さく「右に回して引いてください」とある。 半信半疑で引いてみると、ドアが開いた! 訪問者にとっては不親切すぎるけど、このシチュエーションは面白すぎる! もとは何があったんだろうと思わせるギャラリーの空間は、 ギャラリーっぽい白い壁に作品がかかっている。 でも、床の一部は昔の姿を留めていた。 展示室の隅には2階に上る階段があり、2階にも展示室があった。 2階は1階の半分くらいのスペースで、 天井の一部が三角のガラスの屋根になっていた。 もとは何があったんだろうと気になる。 ギャラリーの人に訊いてみると、以前は銀行だったとのこと。 よくこんな空間を見つけたなあ。 今回、展示されていたのは、 Evgen Copi Gorisekというスロベニア出身のベルリンを基盤に活動している作家。 ブランド品っぽい服を着てポーズをとる人物画だが、 顔はすべて子供の落書きのような単純な笑顔。 自分のさまざまな日常を隠しながら、 SNS上ではブランド品に身を包んで笑顔を見せる人たちを風刺しているんだろうか。 パソコンで描いた粗雑なグラデーションと、 スプレーで描いたような部分と筆のタッチを残しながら描いた部分が 不思議な不協和音を醸し出している。 美術好きな人たちの中では密かに話題になっているらしいこの空間。面白すぎるぞ。 特に、入り口のおばあちゃんたちのことを、 ギャラリーに企画の時に想像しただろうか。 したにしても、していなかったにしても、 そのまま放っておくのがなんかいいな。 #
by matchino
| 2022-03-27 15:23
| 展覧会
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更新が滞っているこのブログですが、街歩きはたゆまず続けております。 そして、街歩きイベント「マチノアルキ」も続けています! で、今回のお知らせですが、 「旅カルチャー講座」でお話しすることになりました。 旅行ライター&エディターである木谷朋子さんが主宰するイベントで、 東京の土屋グループ銀座ショールームで開催されます。 私は東京にうかがえないので、オンラインでお話しさせていただきます。 テーマは「あなたの知らない南山&明洞」。 南山と明洞の近現代の姿を、 マチノアルキ・ナビゲーターならではの視点で切り取ります。 今まで見つけた歴史の痕跡だけでなく、 コロナによる街の変化によって新しく見つかった痕跡まで 盛りだくさんに語ります。 詳細はこちら 講座でお会いできればうれしいです! #
by matchino
| 2022-02-27 13:54
| イベント
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機関車トーマスに出てくるような扇形車庫が清凉里駅にあるという。 たまたま、近代建築系の友達と「清凉里を歩きに行こう」と いうことになったので、行ってみることにした。 前にストリートビューで見た時は、 道路側からは塀に遮られて見えないような感じだったが、 駅から出る陸橋の上から見られるかも知れないと、陸橋に希望を託した。 京議中央線の清凉里駅2番出口を出て、左側の陸橋へ向かう。 陸橋を渡る前に見渡すと、古い煙突が何本も立っているのが見えた。 お、さっそく見つかった! 転車台はなくなって、その周りに扇形に並んでいた車庫も 一部が残るのみとなっていると聞いたが、 2〜3間ほどしか残っていないのだろうか。 近くから見られるかは分からないが、とりあえず陸橋を渡ってみた。 陸橋を降りて、駅の外側から車庫の方へ向かう。 するとすぐに古そうな煙突が現れた。 何の用途に使われていたものかは分からないが、 統治時代に建てられたものではないかと推測してみる。 塀の上に手を伸ばして、塀の向こうを撮ってみる。 その時、一緒に行った、韓国古建築散歩のりうめいさんが言った。 「前に入ったけど、入っちゃいけなかったのかなあ?」 え?入ったの? りうめいさんは、以前に訪ねた時、 入り口が開いていて、入って写真を撮ってきたという。 普通そういうところは一般人は立ち入り禁止だよなあ…。 しばらく歩くと入り口が現れた。 門は大きく開かれており、「立ち入り禁止」の表示もない。 おそるおそる入ってみると、近くに職員らしい人もいたが、 こちらのことを何も気にしていないようだ。 「大丈夫みたいだね…」 と、ドキドキしながらも車庫の方へ。 間もなく目の前に現れた車庫。 隣の区間が撤去されて、開口部はそのままになっている。 今は車庫としては使われていないらしく、その中に新しい建物が建っている。 扇形車庫について調べてみると、 蒸気機関車の時代に使われていたものらしい。 蒸気機関車は前後ろがあるため、 車庫に入れる時は方向転換して入れなければならない。 そのため、転車台が必要になり、 転車台の周りに扇形に車庫が配置された。 扇形にしたのは敷地の有効活用のためだという。 ディーゼル機関車が登場してからは方向転換する必要がなくなり、 扇形車庫は役目を終え、多くの扇形車庫は姿を消した。 清凉里駅に残るこの扇形車庫は韓国で唯一残るものだという。 外側はレンガの外装となっており、窓が大きくとられている。 これは、機関車が黒いのと煤の黒のために、 明るさを確保するために必要なのだという。 後ろの方に回ってみると、文化財の解説のプレートがあった。 解説によると、1938年に建てられ、 「ソウル清凉里駅検修車庫」という名で紹介されている。 元は27間あったが、現在は3間だけが残っている。 国の登録文化財に指定されているが、3間だけになってから文化財に指定されたのかなあ。 全部残っていたら壮観だっただろうに。 隣の建物も同じくらいの時期のものだろうか。 なかなか古そうでいい。 ちなみに、後から調べてみると、敷地内に入るのは一応断らないといけないらしい。 入り口の守衛さんに「見学させてください」といえばいいらしいのだが、 守衛さん、いなかったし、大丈夫だったんじゃないかな…?
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by matchino
| 2021-07-03 20:34
| ソウル
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再び永登浦を訪れた。 楊坪洞にある営団住宅を見に行き、そこもとてもよかったのだが、 ついでに行ったところが衝撃的だったので、それについて書いてみよう。 その「ついでに行った」場所は、前回訪れた東南アパート。 前回はアパートの下の階にある商店街を見て来られなかったのだが、 同行者がいる勢いで入ってみたのだ。 永登浦伝統市場の中に建つ東南アパート。 一階に入ってみると、すぐに現れたのは、「休憩室」と看板が出ている店。 「巨木休憩室」と書かれた下に「ミニ・コーヒーショップ」とある。 「巨木」なのに「ミニ」なんだ。 中からはオレンジ色の光が漏れている。 入ってみたいけど、中から出てきたおばさんがぴしゃりとドアを閉めた。 しかたなく、さらに奥に入っていくと、 またまた「休憩室」が出てきた。 ドアには「ビール・コーヒー」とカッティングシートで書かれている。 少しドアが開いていて、中をチラッと見ると、 常連ぽいおじいさんおばあさんたちが楽しそうに談笑している。 本物のレトロにとてもそそられる。 でも「ふっかけられたらどうしよう」とか思って入れない。 その向かいも「休憩室」、少し行くとまた「休憩室」と、休憩室だらけ。 ここはおじいさんおばあさんたちの溜まり場なんだ! 入ってみたいのに入れないもどかしさを抱えて2階へ。 側面になんともそそられる店名が書かれた古い階段を上る。 両側から上がれる構造が面白いな。 階段の踊り場の壁には「今日のプログラム」という掲示板がかかっていて、 プンバやら歌手やらのポスターが並んでいる。 上の階からは誰かの歌声が聞こえてくる。 3階まで上ると、「PLAZA 劇場」と書かれた店。 先ほどのポスターの店らしい。 ドアには「プンバカクソリ公演場」という貼り紙。 モニターにはライブ映像が流れていた。 気になる…! 入ってみたい…! 中を見てみると、カウンターに「入場料2000ウォン」とある。 どうしようかと思っていると、韓服を着たおばさんが出てきた。 「若いお姉さん、お兄さん、どうぞどうぞ」と、 誘われるままに入ることに。 映画でしか見たことがなかったこういう空間に入れるなんて! 先ほどのおばさんに聞いてみた。 「ここはどのくらいになるんですか?」 「前は成人劇場だったのを、5年前から私たちがやってるんだよ」 劇場の中に入ると、舞台で派手な色の服を着た女性が歌っている。 赤い客席には5、6人のおじいさんとおばさんが一人。 おじいさんの一人は前の方に出て踊っている。 こういう公演が毎日ここで行われているんだろうなあ。 それにしても、入場料2000ウォンでやっていけるんだろうか。 2000ウォンだから客が入るのかもしれないけど。 後で検索してみると、「プルンクッチャン(青い劇場)」というこの劇場、 Youtubeにたくさんの動画が上がっていた。 全国各地の祭りを周りながら地方巡業もしているらしい。 永登浦のシルバーカルチャーを堪能した日だった。 数年前にこれ系の街歩きに誘われた時は行かなかったのに この面白さが分かるようになってきたなあ。 今度は「休憩室」に入ってみたいな…。
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by matchino
| 2021-06-20 11:27
| ソウル
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白い磨崖仏を見に弘恩洞を訪ねた。 玉泉庵(オクチョンアム)という寺。 写真を見ると、白く色が塗られていて、 最近塗られてしまったのかと思ったが、 実は昔から白く塗られているとのこと。 光化門からバスに乗って北上し、 洗剣亭路に合流したところでバスを降りた。 停留所の向かいに見える高台のアパート。 イェグリーンアパートという名で、1975年築。 怪しげな雰囲気なので見に行きたかったが、 妻もいっしょだったので、次の機会に。 交差点の近くには立派な韓屋。 近くまで行ってみると、石坡廊という宮廷料理の店。 あ、ここは昔、付岩洞を歩いた時に来たなあ。 ここから弘済川に沿って洗剣亭路を西に向かう。 途中で見た「弘智門」。 蕩春臺城という城郭の門だという。 うーん、まだまだ知らないことはたくさんあるな。 またしばらく歩いていくと、弘済川のほとりに寺が見えてきた。 玉泉庵だ。 弘済川に架けられた橋の向こうに目当ての白仏が佇んでいた。 普渡閣という建物に覆われている。 白く塗られており、目や髪などは黒で、唇と装飾品は朱色で描かれている。 磨崖仏がいつ頃に刻まれたかは未詳で、 朝鮮末期から「白衣観音像」とか「白仏」と呼ばれていたという。 朝鮮を建国した太祖・李成桂がここで祈祷したとか、 興宣大院君の夫人が息子である高宗のために祈祷したといわれている。 朝鮮末期に朝鮮を訪れた外国人たちは、 「White Buddha」と呼んで珍しがり、 彼らが撮った写真が何点が残っているという。 日本で浮世絵を学んだイギリスの版画家である エリザベス・キースもこの白仏を版画に描いた。 山の中の谷間を流れる川のほとりの白い仏。 当時の人たちはどんな思いでこの仏を眺めたんだろう。 車がひっきりなしに通る道路がすぐ近くにあるけれど、 川のせせらぎによって車の騒音が緩和されている。 川が階段式に整えられているのは せせらぎを増幅させるための装置なんだろうか? 寺を一巡りしてから川沿いを散策し、 弘済駅に向かうバスに乗った。 洗剣亭から弘済川に沿っていくこの道、 散策するにもなかなかいいコースだな。 マチノアルキのコースにしてみるかな…。 #
by matchino
| 2021-06-06 18:19
| ソウル
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