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キリンクリムの「韓国現代建築の今日」

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「現代建築の断面」という韓国・国立現代美術館のプログラムがあるらしい。そこで映像制作社「キリンクリム」の「韓国現代建築の今日」という映像が上映されるということでさっそく娘を連れて行ってきた。

「キリンクリム」は、チョン・ダウンさん、キム・ジョンシンさん夫婦の建築映像制作ユニットで、私は彼らが撮った伊丹潤の建築映像に感動して憶えていた。

伊丹潤の映像のトレーラーがYouTubeに公開されていた。


その後、このブログでも何度か紹介したランスキー先生こと金蘭基氏のイベントで偶然にも「キリンクリム」のキム・ジョンシンさんに出会い、その後も何度かお会いしている。
時には私が主催している街歩きイベント「マチノアルキ」の出発の場所にたまたま居合わせて、一緒に歩いたこともあったりと、不思議な縁を感じさせる。

さて、今回上映する映像は、韓国の今を代表する8人の建築家の作品を一つひとつ選んで、建築家自身によるコンセプトの紹介と、評論家による解説がなされる中で、建築の美しい映像が流れるもの。
建築自体の美しさもさることながら、それを切り取る映像が、言葉を失うほどに美しい。一つひとつの建築をぜひ訪問してみたい。

映像の一部がYouTubeにあった。

映像を見終わった後は、「キリンクリム」の二人と建築家たちのトークの時間。
実は一番前の席には、この映像に出てきた建築家と評論家たちが勢ぞろいしていたのだ。私も何度かお会いした劉成龍教授が来ているのは分かったけれど、まさかこの建築家たちがほとんど参加しているとは思ってもみなかったので驚いた。

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トークの最初にチョン・ダウンさんは「勇気の問題だった」と語った。これだけの建築家の映像を撮ることに対して「応じてくれるだろうか」という心配はあったけれど、勇気を持ってお願いしてみると応じてくれたというのだ。もちろん、実力と実績があったから可能だったことは確かだが、「勇気」という言葉にとても感銘を受けた。
チョン監督には2回お会いしたことがあるが、いつも彼女の情熱に感心する。そして建築に対する愛情を感じるひと時だった。
「建築家の方たちが愛情を込めて建てたこの建築をいかに撮るか」という話をしていたが、建築家の愛情と映像作家の愛情が一つになって生まれた作品だと思う。
また、今回の映像を観て、チョン監督の「建築が空間と時間の芸術であるため、それを表現するのには写真より映像がふさわしい」という言葉に強く共感した。私は今までは建築を写真でしか撮ったことがないけれど、今度は動画で撮ってみよう。

現在、キリンクリムは伊丹潤のドキュメンタリーをより長編の作品にする作業をしているという。どこで上映されるようになるかはまだ分からないけれど、より多くの人たちの目に触れるようになればいいと思う。

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by matchino | 2016-12-08 22:20 | 建築 | Comments(0)

ソウル市立美術館「ソウルバベル」展

ソウル市立美術館は今、「スタンリー・キューブリック展」が進行中。
若えモンはたくさん来ているみたいだけど、入場料が高いし、キューブリックってあんまり見たことがないのでパス。

それで、1階で展示中の「ソウルバベル」展を見てきた。
この展示は、国内の現代作家を紹介する展示のうち、若手作家を紹介する「SeMA(ソウル市立美術館)ブルー」のプログラム。
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美術館のサイトにある説明によると、

今回のSeMAブルー2016は、「ソウルバベル」というタイトルで、個別作家の作品を深く扱ってきた例年の展示とは違い、現在、ソウル市のあちらこちらで自生的につくられている芸術プラットフォームと彼らの創作活動に注目する。展示は、乙支路、昌信洞、清凉里などソウルの旧都心や旧産業地域、あるいは町外れの隙間で独立的に空間を運営中であったり、ウェブを基盤として一時的共同作業を営んでいるオルタナティブ共同体の活動を一つの現象として照明するために企画した。

とのこと。
「乙支路」とか「昌信洞」という地名に引かれて行ってみることにした。

展示室に入るなり、館内放送。まもなくパフォーマンスが始まるとのこと。
場所についてのアナウンスもなく、なんとなく人が集まっているあたりに行ってみた。

アイフォンを持った女性が登場し、風船の草原(?)に横になった。
ときどきアイフォンに向かってつぶやいている。その声がどこかでマイクで拾われて、増幅されている。
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やがて女性が起き上がって、風船を摘み始めた。ときどきアイフォンに向かってつぶやきながら。
で、ほとんどを積み終わって、それで終わり。

んー、なんなんだ。
30人くらいの人たちが見ていたけれど、純粋な観客は10人くらいで、あとは内輪みたいだ。

で、他の作品を見て回ったけれど、正直いって何をいいたいのかは不明。
最近のアートの文脈を把握していたら分かるもんなんだろうか?
ちょっと内輪すぎるんじゃないかなあ、というのが私の感想。
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まあ、その中でも気に入ったのが、下の写真作品。
廃墟のような部屋に、テトラポッドの形の風船が置いてある。
どこにある建物なのか気になる。
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韓国のギャラリーに行ったりすると、部外者が入りにくい壁を感じることが多い。
この日の展示を行っていた人たちの作業する空間に行っても、疎外感を感じて帰ってくるだけなんじゃないだろうかという気がする。まあ、行ってみないと分からないけれど。

それにしても、「バベル」ってなんだ? バベルの塔?
「3つの下僕に命令だ!やー!」ではないだろうし…
人が言葉が通じないようになってしまったというあれか?
私がこの人たちと疎通できないのはこのためか?

展示は4月5日まで。

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by matchino | 2016-01-28 21:22 | 展覧会 | Comments(0)

美術館となった旧ベルギー領事館

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ソウルにある近代建築は圧倒的に漢江の北にあるものが多い。今でこそ漢江の南は栄えているが、昔のソウルの中心は漢江の北にあったからだ。それで、古い建築がないから、私と江南とはあまり縁がないのだが、江南を訪ねていく理由の一つが、このソウル市立美術館の南ソウル生活美術館があるから。といってもなかなか行く機会に恵まれず、今まで2回しか行ったことがないのだが。

日本人の建築家によって設計された美しいレンガ造りの建物で、元をたどると会賢洞にあった駐韓ベルギー領事館の建物だった。それが領事館の移転によって横浜貿易会社に売却された。解放後も紆余曲折があったが、文化財に指定され、再開発によって移転されながらもその姿を保ってきた。現在はウリ銀行の所有となっており、ソウル市に無償で貸し出している状態だという。

その旧ベルギー領事館の110周年を記念して、まさにこの建物で行われている展示が、「美術館となった旧ベルギー領事館」。この建物の歴史と、それにちなんだ美術作品の展示で、「ソウルの近代建築の生き字引」といわれるアン・チャンモ教授のキュレーションで行われるとのこと。さっそく訪ねてみた。

今回の展示で期待していたことがある。それはこの建築の設計者のこと。どこの本を見ても「コダマ」としか書いていない。それで、もしかしたらこの「コダマ」さんの正体が分かるかもしれないということだった。

さて、旧ベルギー領事館は、地下鉄4号線の舎堂駅で降りてすぐのところにある。普通の韓国的な街の中にとつぜん美しい洋館が現れるので、驚く人も多い。久しぶりに訪れた旧ベルギー領事館は、やはり美しかった。

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重々しい扉を開けると中央に廊下があり、その両側が展示室となっている。
最初の展示室の壁には解体して再建するまでの写真が展示されており、この建物の年表があった。
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そして、概要を紹介する文章に、設計者の名前があった!
児玉琢。
(D. Godama)とあるのは、ハングルから変換した英文表記であることは間違いない。
名前の読み方は書かれていなかったが、「たく」だろうなあ。

さらに、「日本人・児玉琢が設計したといわれているが、児玉は設計士ではなく建築技師であり、建築様式は当時のベルギー国王であったレオポルド2世が好んだ新古典主義様式で建てられたため、『レオポルド2世様式』とも呼ばれた。正確な様式名は『後期古典主義建築』である」とあった。
実際、児玉氏は技師だったようだ。
でも、これを様式だけで片付けてしまうのはちょっと乱暴じゃないかなあ。
まあ、日本人が設計したものを「美しい」とは評価しにくいため、そのような方便をつかったのではないか、というのが私の推測。まあ、この美しい建物が残ってくれればそれでいいのだけれど。

部屋の真ん中には当時の資料。ほとんどがアン教授個人の所蔵だ。すごい…
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その中で目を引いたのが、ベルギーが朝鮮と修好通商条約を締結して最初に領事館を置いた場所を示す貞洞の地図。
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最近読んだ「ソンタクホテル」、「貞洞の各国公使館」という本に、ベルギー領事館について詳しく出ていたのだが、その本に書かれていたとおり、フランス領事館の向かいに「前比利斬領事館(前ベルギー領事館)」とある。ここは、朝鮮王朝のために多大な貢献をしたフランス産まれのドイツ人、ソンタク(孫澤)婦人のために、当時の国王である高宗が下賜した洋館なのだという。
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1階は、この建物の歴史に関する展示で、2階は旧ベルギー領事館をモチーフにした美術作品を展示していた。
けっこう興味深い作品が多かったが、その中でも一番気に入ったのが、近代建築をモチーフにした作品。
旧ベルギー領事館とか江華島の聖公会温水里聖堂、徳寿宮の静観軒など、私が気に入っているソウルの近代建築ばかりをモチーフをしているのがなんだかうれしかった。
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前回来た時は、それほど建物を見る時間を取れなかったけれど、今回はちょうど連れてきた娘が寝てくれたので、建物の細部を眺めることができた。それにしても、娘が大きくなってきたので、おんぶして写真を撮るのはつらい…。
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階段も美しい…


展示は2016年2月21日まで。地下鉄4号線舎堂駅6番出口を出てすぐ。

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by matchino | 2015-12-28 22:01 | 建築 | Comments(0)

国立現代美術館ソウル館「若い建築家プログラム」2015

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国立現代美術館ソウル館で、昨年から行われている「若い建築家プログラム」。今年もソウル館の中庭に作品が設置されている。
去年はニンニクみたいな雲の作品だったが、今年のは巨大なすだれが空に波打っているものだという。
行ってみると、本当にすだれが風にひらめいている。
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作品の題名は「지붕감각」。訳すと「屋根の感覚」といういった意味だろうか。つくったのはSoA(Society of Architecture)という名の、カン・イェリン氏とイ・チフン氏の建築家ユニットで、この作品は韓国の伝統的な素材を使って見直そうという試みだという。
すだれの下にはウッドチップが敷かれ、たくさんの人たちがヨシで作った椅子に座って涼んでいる。
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曇りで風も吹くそれほど暑い日ではなかったので、その空間がどれだけ涼しいのかは分からなかったけど、また暑い日にでも寄ってみたいな。
丸いお盆のような形を作って、その中に収まるようにすだれを設置しているようだ。すだれのところどころにも丸い穴が空いている。円形にしたのは何か意味があるのかな?
円形の片隅には盛り上がった坂があって登れるようになっている。何か思ったら、すだれに空いた穴から顔を出してすだれの上を見られるようになっていた。
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たくさんの人たちが集まっているのは、モニュメント自体が人を集める力があるからか、作品に人を集める力があるのか、それは分からないけれど、人が集まれる憩いの場ができるというのはいいことだと思う。
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でも、監視する人が常に円の中にいて、作品を傷つけないか見張って、椅子の位置を変えると椅子を動かさないように注意される。その人の目が気になってお行儀よくしないといけない気になるのがちょっと嫌だった。観覧者のモラルの問題もあるけれど、もうちょっとセンスのある管理の仕方がないかな。
まあ、これは美術作品であるということなんだろう。耐久性の問題もあるし、難しいところだな。
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すだれが風になびく姿が気持ちよくて、久しぶりに動画撮影。



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by matchino | 2015-07-18 22:42 | 展覧会 | Comments(2)

国立現代美術館「イブル展」と「バウハウスの舞台実験展」

国立現代美術館ソウル館で開かれている、イ・ブル展。
韓国国内よりは海外で評価の高いイ・ブル氏の大規模な新作が見られるということで、けっこう話題になっていたが、まだ見ていなかった。
以前、子供を連れて国立現代美術館には行っていたのだが、この展示は子供が入れないということで、展示室を前にして引き返すしかなかったのだ。
子供が入れないなんて、会田誠の作品みたいなやつ?
いやいやそうではない。(もっともイ・ブル氏が昔、裸になってパフォーマンスをしたことがあるということだが…)
展示室全体が鏡で覆われていたり、白い煙が展示室に充満したりしていて危ないから、ということなのだ。
それでまだ見てなかったのだが、今回、なんとなく水曜日の夜に美術館に行きたくなったので、会社の帰りに一人で寄ったというわけ。
水曜と土曜は、午後6時から9時まで夜間開場していて、入場料が無料なのだ。会社から歩いても30分だし、ありがたい環境だ。

チケットをもらっていつものとおり、エスカレーターで地下に降りる。
すぐ脇には「ソウルボックス」という展示空間。
今はレアンドロ・エルリッヒの作品が展示されている。
ちょっと失敗したのが、地下の「種明かし」的空間から入ってしまったこと。
最初に上から眺めるべきだったのに!
展示の動線、なんとかならんかな。
これは後から上から見た様子。上から見るのだぞ!
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後で調べて分かったのだが、金沢21世紀美術館の「スイミングプール」の人かあ。
螺旋階段の作品は前に見てたな。
プールといい、ここのヨットといい、素材がホックニー的?
アルゼンチンの人なんだー。
作家の紹介動画も上映されていたので、また来よう。

さて、次はついにイ・ブルの展示!
今回は美術館のウェブサイトにあるテキストまでしっかり読んで予習してきたので、期待も大きい。
展示室に入ろうとすると、「注意書きを読んでください」とのこと。
鏡は踏まないでくださいとか、順路に従って進んでくださいとか。
そしていよいよ展示室へ!

まずは、「太陽の都市」という作品。
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あれ?明るい…?
知り合いの話では、鏡を何度も踏みそうになってたいへんだったとか。
えー、そんなことないし!
普通に通り抜けて終わり。もうちょっとすごい体験ができるのかと思ったのに…

そして次の展示室の「早朝の歌」という作品。
これはすごかった!
けっこうな高さがある展示室に、銀色と透明の素材で作られた巨大なオブジェが浮かんでいる。
イ・ブル氏の過去の作品に「サイボーグ」という連作があって、SFアニメのロボット的なオブジェだったが、これもSF的な感じ。宇宙船的なイメージだ。
かっこいい!

白い煙に包まれるというのはこの作品で、1時間に1度、煙を発生させるという。
煙の中でぜひ見てみたくて、スタッフに訊いてみると、「1時間半に一度、煙を発生するので、次は8時になりますね…」と。まだ1時間あるし!

それでとりあえず、他の展示室を見に行くことにした。

もう一つ見たかった展示が「バウハウスの舞台実験」。
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バウハウスによる舞台衣装をはじめとするデザインの展示で、幾何学的なデザイン画や衣装を展示している。
人体を直線と円で解こうとする試みがうかがえるスケッチがたくさんあった。
形状や色彩はバウハウス独特な印象を受けるが、なかなかかっこいい。

あるFB友達は、この衣装の一つがウルトラマンに似ているといって、ウルトラマンの人形を息子に借りてきて一緒に写真を撮っていた。
バウハウスがどんなコンテンツに影響を与えたのかについての展示をしても面白いだろうなあ。
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この衣装で行ったであろう実験的な演劇に参加してみたい。どこかの劇団でやったりはしてないだろうか?
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まだ8時にならないので、他の展示室を見てから、8時に「早朝の歌」を見にいってみた。

あ、白い煙を吐いてる!
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オブジェの一つから、尖った矢のようなオブジェに向かって白い煙が吐き出されている!
人体には害のない煙らしいけれど、何の煙なんだろう。数十秒後にはオブジェがまっ白い煙に包まれた。
目の前が見えないほどになるかと思ったらそうでもない。
でも煙に包まれたオブジェは、まさに無限の空間に浮かんでいるかのよう!
まさにSFの世界!
ときどき点滅する赤い光が宇宙船的なイメージを高めている。
これは本当にずっと眺めていたくなる。
いやあ、1時間待って見た甲斐があった!

イ・ブル展は3月15日まで。見るんだったら煙は見ることをお勧めするので、時間の余裕を持って訪ねよう。

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by matchino | 2015-02-13 20:15 | 展覧会 | Comments(0)

ソウル市立美術館の展示「アフリカ・ナウ」

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前回、ソウル市立美術館に行ったときに時間がなくて見られなかった展示「アフリカ・ナウ」を見てきた。
アフリカの美術ってティンガティンガとか仮面とかしか見てなかったけれど、今回の展示は現代美術。
誰かがブログで「アフリカにも現代美術があったんだ!」とか書いていたけど、当たり前じゃ!
でも、今回見た作品は皆、日本人や韓国人が思い描くアフリカのイメージが土台になっているというのは感じる。
アフリカの作家の作品は皆そうなのか、あるいはそういう作品を集めたのか?

2階の展示室の入り口にあったのがこの作品。
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壁一面に動画が映って、けっこうインパクトがあった。
その横には今回の展示の意義などの説明。やっぱり小難しい話だけど、「脱植民地」ってのがキーワードみたいだ。
動画は色とりどりの毛だらけの衣装を着た人がダンスしているのだが、なかなかかっこいい。
アフリカっぽい感じはするけれど、音楽は欧米のロック風だなあ。
あ、でもロック自体、黒人音楽の影響を受けてるから彼らの音楽と見ていいのか?作家名を見てみると、ニック・ケイヴと。
え!あのロックミュージシャンのニック・ケイヴ?彼は白人じゃん!
ちょっと混乱してしまったが、違う黒人のアーティストだった。




最初の部屋は、黒人の白人に対する対抗意識に関する作品が多かった。
この作家は漫画で白人による差別について言及しているが、「白」と「黒」のイメージについて書いてある。
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で、その記述が辞書からの引用ということで、「このイメージってのは白人によってつくられたものなのか!?」とか疑ってしまう。
実のところ、どうなんだろうか?
白人に対する反抗を表現した作品の作家は、ほとんど南アフリカ共和国の作家だった。
アフリカで殖民支配を受けた経験がある国はほとんどだと思うが、その中でも差別を受けて疎外されたのは南アフリカが顕著だということなのだろうか。
どちらにしろ、私たちはアフリカについてあまりにも知らない。
あれだけ大きな大陸で国もたくさんあるのに、単に「アフリカ」とくくってしまうあたりに違和感を感じざるを得ない。

次の部屋は工芸作品が多かった。
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モザンビークの作家で、実際にあった内戦で使われた兵器の残骸で作った仮面。
よく見るいわゆるアフリカの仮面を思わせる形だ。
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16年間にわたる内戦に対する記憶を表現しているが、内戦が民族の記憶の一つとなっているという悲しい事実…

社会運動として、一般の人に工芸作品をつくることを指導しているグループの作品。カラフルな絵だと思ったら、実はビーズでつくられている。
精巧で、美しい。
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これも社会運動でつくられている陶器の作品。
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アフリカの動植物をモチーフにした壺や皿で、形も色も独特で、ずっと見ていても飽きないほどだ。

3階の展示室の作品。
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ダッチワックスというアフリカの服を着たマネキンが交通事故に遭っている。
…いろいろと書いてあったけれど、難しい…
まあ、手前のオブジェと、後ろの写真作品がすごいインパクトだったという。

難解な作品もあるけれど、面白いのでおススメ。
ソウル市立美術館の2、3階展示室で、2月15日まで開催。

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by matchino | 2015-02-01 20:30 | 展覧会 | Comments(0)

ソウル市立美術館の展示「ローテクノロジー:未来に帰る」

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ソウル市立美術館の展示「ローテクノロジー:未来に帰る」を見てきた。
タッチスクリーン、グーグルハングアウト、モノのインターネットなど、さまざまな最先端テクノロジーが普遍化され、日常化された時代に、あえて「ローテクノロジー」を使用した作品を紹介し、その意味を探る展示だった。
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で、ここでいう「ローテクノロジー」は何か。キネティックアートが多かったので、キネティックアートをいっているのかと思ったが、今考えると、過ぎ去ったテクノロジーのことを指しているのだろう。そうでなければ、今、キネティックアートを紹介する意義はないし、ここで紹介されている作家たちの作業の現在のアートシーンにおける意味はなくなってしまうからだ。
個人的にはキネティックアートが好きなので、造形的にだけ見ても面白く、なぜ小難しい説明があるのかと思ったが、よくよく考えてみるとそれは必要だったのだ。といっても展示の趣旨を説明した文章は、脱モダニズムとかテクネとかポイエーシスとか、聞いたこともない、たぶんその意味を聞いても理解が難しい単語がたくさんでてきて、脳を再起動したくなってしまうので、もうちょっと分かりやすく解説してくれると嬉しいのだが。

卵形のフレームの中で、ししおどしみたいな機構が休みなく動いている。コトコトと小気味よく鳴っているのはプラスチックのボトルだった。中に電球が光っていて、部屋全体が動いているかのような雰囲気さえ感じる。
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列車の模型が回っている。同じ日常を繰り返す生活を循環する列車に例えたんだという。確かに単純な動きを繰り返すキネティックアートは機械的な人生、社会のたとえになる、てか、機械そのものだし。
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コンピュータの中に入っているようなファンのでかいやつが並べられていて、その風で四角い箱が浮いている。
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ビニールで作られた風船が空気圧によって動いている。消費社会の発展に従ってその色を変えてきたさまざまな韓国の市場のビニール袋で作られた作品で、そのうごめく様は一つの有機体のように姿を変えていく消費社会を象徴してもいるという。一見きれいに見えるというのも消費社会の象徴っぽい感じだ。
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説明を読むのは面倒くさいけど、ただ見るだけでも面白いのでお勧め。

展示はソウル市立美術館の西小門本館で2015年2月1日まで。入場は無料。

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by matchino | 2015-01-12 22:38 | 展覧会 | Comments(0)

旧ソウル駅でチェ・ジョンファ氏の「総天然色」展

文化駅ソウル284(旧ソウル駅舎)でチェ・ジョンファ氏の展示が開かれているという情報が入り、次の日の秋夕の当日に行ってきたものの、休館日。同じ建物のギャラリーは開いてるのに、なぜ⁉︎

また今度と思ったが、今度が待てない性格で、次の日にさっそく再訪。大邱美術館以来の再会となった。

このブログにも何度かチェ・ジョンファ氏は、プラスチックでできた安物の生活雑貨などをコレクションし、聖と俗、芸術と非芸術などの境界を崩す作品を発表している。
今回の展示のタイトルは、「総天然色」。もともと自然の色を表現しようとして人工的に作った色だが、その極彩色の「天然色」が今では人工的な色になっているという。
前に見た大邱美術館での展示のタイトルは「錬金術」。この人は本当に絶妙なタイトルをつけるなあと思う。

建物が見えたあたりから圧巻!
旧ソウル駅の前に緑と赤の円筒がいくつも立っている!

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ソウル駅に祭祀を行っているようにも見えるこの「お供え物」は、実はプラスチックのザルでできている。
このザル自体、祭祀に欠かせないアイテムだが、このオブジェは市民やソウル駅付近に住み着いている浮浪者と一緒に作ったのだとか。秋夕なのに家族に会えない浮浪者のおじさんたちも、臨時の家族と一緒に祭祀を行ったということか?

さて、入ってまず最初に目に入るのがこの塔。ビニール製の四角いバッグで作られている。
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振り向くと、大邱美術館で見たブタが、入り口の扉の上で浮き沈みしている。風船のように膨らんでは萎むのを繰り返す現代文明の姿を表しているんだとか。なんでブタかというと、韓国ではブタはお金の象徴だからだな。たぶん。
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左の部屋もすごかった。瓦礫の原をキラキラと輝く宇宙船(?)がゆらゆら揺れながら覗き込んでいる。この瓦礫はこの建物を改装する時に出てきたものなんだとか。
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その裏にある展示室には、廊下のような空間に彼のコレクションが展示されている。といっても骨董屋の店の中のようにうずたかく積まれているだけ。それでも、普段は出会わなそうな物同士が出会って新しい表情を生み出している。まさにチョン・ジョンファ・ワールドなのだ。
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それにしても、この人の作品はこの空間によくなじむ。どれが作品でどれがもともとあったものなのかも分からなくなる。

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展示は10月19日まで。

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by matchino | 2014-09-26 22:01 | 展覧会 | Comments(2)

国立現代美術館ソウル館の「若い建築家プログラム」

7月8日、国立現代美術館ソウル館の中庭に新しい構造物が姿を現した。
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ニューヨーク近代美術館(MoMA)が1998年から開催している「若い建築家プログラム」をヒュンダイカードとの協賛で、韓国で実現したものだ。
見に行かないとと思っていたところ、知り合いが、「子供たちが遊べるトランポリンもあるよ」と教えてくれたので、子供たちを連れて行ってきた。

誰かが「ニンニクみたいだ」と話していた風船の群れが、中庭の片隅に並んでいる。風船の間には木で作られた橋が掛けられて、風船を上から眺めることができる。橋は中庭から登って、10mほどの段差のある宗親府の前の庭に繋がっている。
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庭や橋の手すりにはミストを発生させる装置があって、あたりは薄い霧がかかっている。
もともと四角い石が敷かれている庭だが、風船の下は芝生が敷かれており、風船も芝生から生えているので、どうなっているのだろうかと気になる。
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数日前にFB友達が上げていたこのプログラムの制作秘話を読んでみた。
この建造物は「ムンジバン」という建築家グループの「神仙遊び(シンソンノルム)」という作品。
この美術館の特徴の一つが、様々な時代の意味深い建物が集まった場所であるということで、宗親府とキムサの建物が残っており、目の前には景福宮があるが、その中で、宗親府とキムサと新しい建物をつなぐ雲を作ろうというコンセプトだ。仙人が住むような雲の上の世界をイメージした。
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雲の素材はさまざまな意見が検討されたが、エアバルーンに決まった。このニンニクのような風船は雲だったのだ。確かに橋の上に登ると雲に見えなくもない。
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そして、芝生の所々には花が植えられ、ミストによって雲の上にいるような感覚を演出したという。
でも、人は多いし、雲の間から建物が見えるし、雲の上のような感覚はあんまりしないなあ…。
テキストを読んでみると、いろいろと試行錯誤したんだということは分かった。たとえば、四角い石を取り除いて空気を送るホースを埋設し、その上に芝生を植えたんだという。橋も軽さを最大限に感じさせるために木造にし、季節柄、台風にも耐えられるように構造を工夫した。
浮遊感を表現するためにトランポリンを二つ設置して、観覧客が跳ねて遊べるようになっている。
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コンセプトは面白いし、限られた予算の中で安全性にも問題がなく、その雰囲気を感じさせるような構造物を創り出した。でも、だからこそ、もう少し幻想的な雰囲気を創り出してもよかったんじゃないだろうか…。金重業博物館の庭に設置されていたような、一寸先も見えなくなるくらいの霧を発生させるとか…。
まあ、周りの建物が背景になっていることがコンセプトなので、見えることも必要なのかも知れないけれど。
それでも若い建築家に実験的な建築を作らせるというこのプロジェクト自体は面白い。今回の優勝したこの作品の他、次点となった2作品も館内に展示されているというので、また時間をとって行ってみよう。
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by matchino | 2014-08-10 21:09 | 展覧会 | Comments(0)

韓屋と伊丹潤氏の建築展

最近、「人文学、韓屋に住む」という本を読んだ。韓国の伝統家屋である韓屋は、美しいとは言われているが、はたして本当に美しいのか、そしてどのように美しいのか、ということを書いた本だった。

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結論だけ話してしまうと、黄金比などの比例を重要視する西洋美学の観点からいうと美しくない。しかし、それとは違った崇高の美があるということだった。

この本の中で何度も強調していたのは、韓屋は建物自体には比例も何もないが、周囲の環境や自然の中で「屋根の線」を決定するなど、環境も含めた全体の中での美しさを重要視するということ。それから、西洋の美術は比例と色だけを重視するため、質感はどんどんなくなって抽象化していくが、韓国の美術はどこまでも質感がなくならないということだった。


そんな本を読んだ矢先に、それと関連するような展示を見てきた。国立現代美術館で行われていた「伊丹潤:風の造形」展だ。

伊丹潤氏は東京に事務所を持っていた在日韓国人の建築家で、日本はもちろん、韓国でも多くの建築を建てた。

今回の展示は彼の設計した建築の模型やスケッチなどを展示していたが、その中で目玉となるのが、済州島に建てた「水、風、石の美術館」だ。この3つの美術館の模型とスケッチが展示されていたが、この美術館を撮った映像がすばらしかった。

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日の光が差しながら、刻々とその表情が変わっていく様、風が建物を吹き抜けていく音、雨が降って建物の真ん中にある池を波立てる様、すべてが自然と一つになっていて美しい。さらに、そこに小さな虫や鳥たちがやってきて、風景にアクセントを与える。15分ほどの映像は、とても静かであるけれど、その美しさのため飽きることはない。この建物を感じに済州島を訪ねたくなってくる。

この映像を見ながら思い出したのは、先に紹介した韓屋の本で主張していた内容だった。自然の中で自然と一つになる、外と内との区別のない建築。それは韓国人として韓国の美を探究してきた結果から出てきた建築ではないだろうか。
下の映像はそのダイジェスト版。



もう一つ、興味深かったのは、1960年代から70年代の日本現代美術の流派の一つであった「もの派」との関係について。

展示の最初にインタビュー映像が流れていたが、その中で伊丹氏の娘のインタビューがあった。彼女の話の中で、伊丹氏が「もの派」に強く関心を示し、建築の中に「もの派」の要素をいかに取り入れるかを考えていたということだった。

「もの派」については私もよくは知らないが、前衛芸術の反芸術的傾向に反発してものへの還元を主張したという。それは、先に紹介した、どこまでも質感を大事にする韓国の美学に通じる部分ではないだろうか。実際、「もの派」を評価したのは韓国人である李禹煥であったというし。

伊丹氏の建築、特に水、風、石の美術館では、「もの派」の作品を思わせるような石がとても印象的に使われている。最初は日本の枯山水の影響かと思ったけれど、「もの派」の作品で見た石の方が近い気がする。


それにしても、この三つの建物はとても自由だ。抽象的な意味ではなくて、けっこう荒く扱っても大丈夫っぽい感じだったということ。映像の中に出てくる子供なんかはけっこうやりたい放題だった。石の上に寝転んだり、よく磨かれた石を木の棒でカンカン叩いたり、池に敷かれた石を側溝に並べたり、雑草をむしって石でつくった馬に食べさせたり…。「え、こんなにしていいの?」というようなことを模範になってしているのだからけっこう驚きだ。

以前、韓国の建築家の承孝相氏が講演で話していたのが、韓国の書院と日本の枯山水のことだった。彼は日本の建築や美術をとても高く評価しているが、枯山水については触ってはいけないし、何か緊張するし、停止したものだと話していた。それに対し、韓国の寺院や書院などは、どこに座ってもいいし、とても自由なのだという。伊丹氏のこの美術館は、そのような韓国の寺院や書院などの、自由で可変的な性格を持った建築といえるだろう。

日本の建築については私もよく知らないので、これが韓国独自の文化なのかは分からないけれど、この本を読んで伊丹氏の建築を見て、このような関連性を感じた。


伊丹氏が韓国の美術について研究していたという話をしたが、この美術館にも韓国的な彫刻がさりげなく設置されている。石で作った馬が置かれていたり、金属で作った小さな鳳凰や亀などが壁や屋根についていたりする。それがとってつけたような形ではなく、そこにあるべくしてあるという位置にさりげなく設置されており、この美術館に住む住人のように自然に、そして愛らしくたたずんでいる。

このように見せるすべてが、よくできた映像のためかもしれないが、実際に行って、そこにたたずんでみたら、気持ちのよい時間が過ごせるのではないだろうか。以前、安東の陶山書院を訪ねたとき、縁側に座って一日中、瞑想しながら過ごしてみたいと思ったことがある。ここもそんな気分を味わわせてくれる場所ではないかと想像してみる。

次に済州島に行くのが楽しみだ。いつになるかは分からないけれど…。

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by matchino | 2014-07-12 15:01 | 展覧会 | Comments(0)