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ベニスビエンナーレ建築展の帰国展「韓半島 烏瞰図」

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久しぶりの美術館観覧。最近は街歩きに忙しくてなかなか美術館に行けてなかったけれど、今回の展示はぜひ観たいと思っていたもの。実は展示のことを忘れていて、この前知り合いになった韓国ナショナルトラストのチェ・ホジンさんが誘ってくれて、最終日になんとか間に合った。

今回の展示のテーマは「韓半島 烏瞰図」。昨年、ベニスビエンナーレの建築展で韓国館が金獅子賞を受賞したが、その帰国展示だった。展示の内容は北朝鮮と韓国の建築。というより、韓半島の建築というべきか。なぜかというと、100年間の建築についての展示なのだが、今から100年前は分断されていなかったからだ。しかし、その後分断されてしまうことによって、北と南で建築の様式も別れていくようになり、そんな対比も見ることができる機会だった。

この日は最終日というだけでなく、もう一つのイベントがあった。韓国館のコミッショナーとなった建築家のチョ・ミンソク氏が展示の解説をしてくれるというのだ。北との共同展示を行うという壮大な「プランA」を企画しながらも、北との接触自体が簡単ではない中でそれが霧散となり、準備していた「プランB」を行うことになったことなど、展示が完成するまでの15ヶ月の苦労を話してくれた。
プランAは霧散になったとはいえ、北の資料もたくさんあり、テーマの選定だけでも興味深いところに実質的な資料の規模も兼ね備えて、金獅子賞を受賞した訳が分かったような気がした。

展示内容を紹介しよう。

今回の展示のポスター。
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展示のテーマは「韓半島 烏瞰図(オガムド)」。鳥瞰図(ちょうかんず)ではなくて、「鳥(チョ)」の字が「烏(オ)」になっているが、これは1910年生まれの天才詩人・李箱(イサン)の詩「烏瞰図(オガムド)」からとったもの。当時の新聞に連載されながらも難解すぎて読者からの批判もあって連載が中断されたという。

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展示の最初に書いてあった李箱の詩「烏瞰図」の一編。ビジュアル的にも今回のポスターのモチーフになっている。また、上下が対称になっているのも今の韓半島の姿のようだ。
李箱はもとは建築を専攻しており、天才的な実力を発揮していたという。そういった意味でも今回の展示のテーマとして持ってきたのは面白い。

今回の展示に関わった人たちは全世界に散らばっているということで、擬似万国旗をつくって外に掲げていた。
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南を代表する建築家として金寿根(キム・スグン)氏の作品がたくさん展示されていた。
真ん中にあった世運商街の模型。
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ソウルの南北を横切る住商複合アパートをつくる壮大なプロジェクトだが、金寿根氏の手を離れて当初の計画通りには建てられず、実際にも街を荒廃させる原因となってしまって失敗したプロジェクトとなってしまった。一部は取り壊されたが、最近、建築家の承孝相(スン・ヒョサン)氏が中心となって新しく生まれ変わるらしい。
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この模型の上に掲げられた写真は、左がソウルの街で、右が「北の金寿根」といわれる建築家キム・ジョンヒ氏の作品。

金寿根氏が設計した建築。
このブログでも何回か紹介したウォーカーヒルのヒルトップ・バー。今は下がふさがれているけれど、建てた当時は開いてたんだな。こうしてこそ本当にW型なのに。
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金寿根氏によるポンピドゥーセンター案。結局はレンゾ・ピアノが勝ち取ったけれど、金寿根氏も出してたんだな。
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空間社屋(上)と京東教会(下)。京東教会は、今は天井がふさがれているけれど、建設当時はこんなふうに開いてたんだな。
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そしてこちらは北の建築。
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まさにモダニズム。誘ってくれたチェ・ホジンさんの話によると、モダニズム建築の礎を築いたル・コルビジェは社会主義者で、モダニズム建築と北朝鮮とは相性がいいとのこと。
ここにある写真は外国人が撮ったもので、すべての建物が「設計者:未詳」となっていた。解説によると、北の建物は皆、設計が金正日となっているんだという。金正日はさまざまな技術を持った人だともいわれているだとか。もっとも優秀な労働者として偶像化されているんだろうか。

ここはDMZについての展示。
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板門店を北と南から撮った写真が並べられている。お互いに数十メートルしか離れていないが、この2枚の写真を撮るためには1000キロ以上を回ってこなければならないという現実がある。

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DMZのジオラマ。
軍事施設が配置されていたり、地中には兵士たちの白骨が埋まっていたり、空には対北ビラの風船が飛んでいたりするけれど、民間人統制地域であるため、手つかずの自然が残っているという皮肉な事実がある。

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DMZを真ん中に置いた北と南の各機関の関連図。これだけよく調べたもんだな。
日本の朝総連はどこに通じているのかたどってみると、朝鮮労働党に直結していた。

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DMZをテーマにしたナム・ジョン・パイクの作品。
「DMZをトラ農園にしよう」と。
「トラ」という発想はパイクだからか、時代的なものか…?

北の人にストーリーと絵を依頼して制作した建築マンガ。
女流建築家の主人公が設計に悩んだ末に紅葉の葉からインスピレーションを受けて傑作を設計し、コンペを勝ち取るというストーリー。
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劇画タッチの画風から韓服(北では朝鮮服というのか?)を着た主人公、女性の社会進出、建築に対する哲学など、いろいろな要素を盛り込んでいて、南の立場から見ても興味深い部分が多い。
写真は撮り損ねたが、次の部屋に展示されていた建築に関する北の絵画には、建設現場に女性の姿があった。まあ、それが共産主義の理想として描いているだけなのか、実際に男女平等がなされているのかは分からないけれど、理想だけなんじゃないだろうかといのが私の推測。

このほかにも南北の専門家による解説の動画があったりと、興味深い資料がたくさんあった。特に動画には、チョ・ミンソク建築家が「近現代建築史の歩く百科事典」と評していた、今回のキュレーターの一人であるアン・チャンモ氏の解説もあり、見られなかったのは残念だ。

この展示、アメリカから招請されて展示を行うという。

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by matchino | 2015-05-21 22:44 | 展覧会 | Comments(0)

北漢江の川辺で「大成里、外の美術展」

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朝のニュースで「大成里、外の美術展(바깥 미술전)」という展示が紹介されていた。
漢江の支流である北漢江の川辺で、木や草や石などをつかったオブジェが展示されているらしい。
調べてみると、1981年から続いている企画なんだという。8日間という短い期間で、大きな話題になることもなく、静かに行われていた展示だったのだろう。
暖かくなってきたし、子供たちを外で遊ばせるのも兼ねて訪ねてみた。

地下鉄上鳳駅から江原道の春川に向かう京春線に乗って1時間ほど、大成里駅(テソンニ)に到着する。
MT(大学のサークルなどの親睦を深めるための合宿)でやってきた大学生や子供連れの家族がけっこうたくさん降りた。
北漢江辺散策路への標識に沿って少し歩くと、「外の美術展」の看板が出ていた。
北漢江へ出ると、すぐ左に美術展の横断幕。

ニュースで紹介されているくらいだから人が多いかと思ったら、人は点々。
来ている人たちは、北漢江沿いのサイクリングロードを自転車で走るために来た人たち。そして散策を楽しむ人たち。わざわざ美術展を見に来る人はいないんだろうか。

それでも、川があり、木があり、山が見え、気持ちのいい公園だ。
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ゴミがけっこう落ちていたり、ベンチの周りはタバコの吸い殻だらけだったりするけど…。

作品を紹介しよう。
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セミの脱け殻を透明なビニールで作った作品。
30cmくらいの大きさで、けっこうたくさんくっついているので、ちょっと気持ち悪い気も…

「斜線」という題名の作品。木の陰?
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木の幹に生えるキノコのような作品。
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贈答用の箱を再利用して作ったロボット(?)。
解説によるとロボットではなくて木らしい。
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ヤギ?
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木が花束を持って、そこにちょうちょがとまっている。
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川辺で遊ぶ子供たち?カエル?
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木の枝を背もたれにした椅子。
座っていると景色もいいのでとても気持ちがよかったのだ。
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木屑や枯れ葉などを盛り上げた横には石を積んで、古墳?
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展示のマップもなく、範囲を示す表示もなく、ただ作品の前にA4用紙に書かれた作品の簡単な説明があるだけなので、とてもゆるーい感じ。

作品がどこまであるんだろうかと川辺をずっと歩いていくと、ちょっと不思議な光景が。
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石の上に石が立ててある。
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近づいて触ってみると、乗せた石は下の石と接着してあった。
作品の表示がないところを見ると、昨年の作品なんだろうか。

こうして回ってみると、木の一つひとつが作品に見えてくる。すっかり葉が落ちた木の上に枯れ草が覆い被さって、オブジェのように見えるのだ。
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木にゴミがひっかかったりしているのも作品ではないかと思ったり。

会場(?)にけっこうゴミが落ちているので、「こういうイベントするんだったら掃除しろよなー」とか思ったけれど、それも飾らないこの地域の姿なのだと、それを変に飾ろうとしない住民も面白いなと思った。

そういえば、淀川のゴミでオブジェを作って川原に展示するアートユニット「淀川テクニック」なんかも地域住民と協力して制作活動をしていたりしていたよな、と。

環境アートって、自然保護的なメッセージを発しているものが多いと思うけど、変な理想主義に陥らない姿を見せているようでいいかも。

2015年の展示は2月28日から3月8日までで、終わってしまったけれど、毎年開催しているようなので、気になった人は来年に!
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by matchino | 2015-03-19 22:33 | 展覧会 | Comments(0)

サムスン美術館プラトーで村上隆の回顧展

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7月4日からサムスン美術館プラトーで、村上隆の回顧展が行われている。
展示に先立って村上氏自身も韓国を訪れて記者会見と一般の人を対象にしたアーティストトークイベントを行ったらしい。
記者会見の方の記事は、よく知らない人たち向けの記事だったけど、アーティストトークに参加した人たちのブログ記事は、ちょっと深めの内容もあって読み応えがあった。

村上氏については、韓国でも注目されている。「日本のアンディ・ウォーホル」と報道されており、西洋中心のアートシーンにアジアから一石を投じた人として有名だ。

西洋の美術において、村上氏の作品がどのように評価されているかということについては、村上氏自身が言及している内容も含めてさまざまなところで語られているが、韓国でどのように受け入れられているのかということはとても気になる。
西洋でアジアの文化を知らしめた英雄として認識されている部分はもちろんあるだろう。アーティストトークの記事をみると、PSYをはじめとするK-POPの西洋での人気について、村上氏自身が言及したということだが、韓国内でも同じ文脈で捉えている部分も少なからずあるだろう。

それと同時に気になるのは、同じアジアとしても、日本と韓国では文化も違い、アートシーンも違う中で、村上氏の作品がどのように受け入れられているかということだ。
日本的な概念がたくさん込められているが、そのような概念が理解されているのかということも気になる。
また、日本国内では村上氏の活動について多くの批判がなされているが、韓国では蚊帳の外であるためか、批判の声は聞いたことがない。
しかし、もし韓国国内の作家が同じような活動をしていたら批判されるだろうか、ということが気になる。
私の考えに過ぎないが、もし韓国で同じような作家が出てきたら、歓迎されるのではないかと思う。もちろん批判する人は出てくるかもしれないが、大きな声でいうことはできなくなるだろうし、社会ができなくさせるのではないかと思う。
その歓迎が作家自身にとって嬉しいものとなるかどうかは分からないが。でも、そうなれば作家はまた違った活動で社会を動かすのではないだろうか。

まあ、いろいろなことを考えていても始まらないので、まず展示を見に行ってみようか。
今まで村上氏の作品を見たことは何度もあるが、アジアで初の回顧展ということなので、まとめてたくさんの作品に触れるいい機会だ。

会期は12月8日まで。観覧料は5000ウォン。地下鉄1、2号線市庁駅8番出口から南大門方面に徒歩5分。
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by matchino | 2013-07-07 15:43 | 展覧会 | Comments(0)

娘と訪ねる国立現代美術館 その3

娘と訪ねる国立現代美術館の話の続き。

4階の展示室のチョン・ギヨン氏の「絵日記」展はまだ会期が残っていたので、ちらっとだけ見て、ビル・ビオラ展を探す。
ビル・ビオラの展示は、1階のテレビの塔の横の円形展示室にあった。

ビル・ビオラについては懐かしい思い出がある。
高校生の時、「ふくい国際ビデオビエンナーレ」に行ったことがある。名古屋から福井県まで、一人で高速バスに乗って行き、一日中ビデオアートを楽しんで、日帰りで帰ってきた。
その時、会場にあったのがビル・ビオラのインスタレーションだった。

その時の作品は、こんな感じだった。
暗くて狭い空間の壁一面に何かの映像が映し出されている。
誰かの誕生日パーティーの映像だというが、大きく引き伸ばされてスローモーションになっているため、異様で恐ろしささえ感じる作品だった。
それが印象的で今でも憶えているのだけれど、その時以来だとすると、ほぼ25年ぶりの出会いか。

今回も展示室は暗くなっていて、入口には「暗いので足元に気をつけてください」という注意書きがあった。

で、入り口に立って驚いた。暗い通路の向こうに「Bill Viola」の文字が浮かんでいる。
この円形の展示室は真ん中に円形の大きな柱が立っているが、その上にオレンジ色で文字が投影されていたのだった。
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ドラマチックな演出だと思って中に入ると、広い展示室には何もなかった。
暗闇の中を歩いていくと、柱の裏側に縦長の映像が投影されていた。
燃え上がる炎の前に真っ黒な人影が映っている。
時間がなかったのて、その場面しか見られなかったが、少し後で子供たちを連れて見にきた時も同じ映像だったので、これだけかもしれない。

後で解説文を読んでみると、「トリスタン・プロジェクト」というプロジェクトの中の作品で、オペラ「トリスタンとイゾルデ」のための作品らしい。オペラを知らないから何か分からないわけだ。
オペラを知っていても何かわからなかったかもしれないけど。
数日前、この作品の横で「トリスタンとイゾルデ」の演奏会を行ったそうだ。どうせだったら一度聴いてみたかったなあ。

解説文を読むと、私が高校生の時に見た作品と同一線上の「生と死」をテーマに作品制作をしているようだった。
この展示はまだ会期が残っているので、また見にこよう。

というわけで、たった40分の駆け足観覧だったが、こんなに書いてしまった。
子供たちはチョン・ギヨン氏のアーカイブ展を見てきて、建築模型の写真をたくさん撮ってきたようだ。

で、せっかくここまで来たのだから、ソウル大公園を回る「コッキリ列車(ゾウさん列車)」に乗せてあげると、子供たちが喜んだ。
一番前が見晴らしがいいかと思ったら、ぜんぜん前が見えないし、エンジンのすぐ後ろで暑いし、何にもいいことはない。
コッキリ列車は2両目以降に乗るべし!

さて、次に来るのは8月くらいかな。
その時は家族だけで来るのだ…。
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by matchino | 2013-07-05 20:15 | 展覧会 | Comments(0)

娘と訪ねる国立現代美術館 その2

前回に引き続き、国立現代美術館で行われていた「若い摸索」展の話。

この展示の最後にあった作品が印象的だった。
そこには「ダウンライト」という会社の製品の展示がなされているのだが、その製品は、催眠術をかける機械らしい。
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デモンストレーションがなされ、展示用のバナーがそれらしく作られている。

機械自体の形はよく作ってあるけれど、内容は昔の映画に出てきたような渦巻きが回る映像に「あなたはだんだん眠ーくなるー」的な音声がついているものだ。
でも、その横には秘密組織でなされていたような実験や研究の道具が展示されており、ダウンライトという会社についての説明があった。

この会社は昔、ドイツ政府(だったかな?)の命を受け、催眠術や洗脳について研究していた秘密組織で、その存在は明らかにされてこなかったが、ここにある資料は日本などに流出した資料を集めたものなのだという。

え、これって本当なの?

展示の説明と同じフォーマットで壁に書かれているからには、展示に対する解説なんだろう。
「…というシチュエーションを仮定して…」みたいな説明が出てくるのを期待したが、最後まで出てこなかった。

でも、なぜこれが美術の展示?と混乱してきたので、そこにいた係りの人に「ここに書いてあるのは事実なんですか?」と聞いてみた。
すると、「これは全部作家が捏造したものです」と。

すべての展示物を見た後にあった、作家に対する説明には、これがすべて作家が捏造した事実であることが書かれていた。

この会社の名前である「ダウンライト(Downliet)自体、「真っ赤な嘘」の英語「downright lie」を縮めたものなんだとか。

なあんだ。これを読まなかったら信じていたかもしれない!
「えー、そんなん嘘でしょ」と思わなかったわけではない。
でも、公共の美術館に「…である」と書かれていたら普通は信じるしかない。

最近、いろいろな陰謀説について聞くが、それと同じ類のものだ。また、その反対に、陰謀を隠すための報道も同じことだ。
私なんかは、基本的にどちらも信じてしまう方だから、すぐに「洗脳」されてしまう。「洗脳」ということ自体も、プロパガンダということはあり得たとしても、この展示にあるような方法での洗脳は嘘だという話も聞いたことがある。

後になって思い出したのだが、催眠術をかける機械を見ている時、目の前に半透明のガラス窓があり、数人の人影が行ったり来たりしていた。
催眠装置を見ている私を誰かが見ているのかと思ったら、その窓の裏には何もなかった。
はっきりとは分からないが、監視されているような感覚を与えるための映像だったのかもしれない。

さて、この「若い摸索」展企は20分ほどで駆け抜けて、他の展示を探した。
さあ、いよいよビル・ビオラ展。
次回に続く!
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by matchino | 2013-07-02 21:29 | 展覧会 | Comments(0)

娘と訪ねる国立現代美術館 その1

小学4年生の次女が、友達と一緒に美術館に連れていって欲しいといい出した。
そうかそうか。じゃあ行こうということで、完全に私の趣味を中心に場所選び。
個人的にずっと見たかった展示があったので、国立現代美術館に行くことにした。
なんてえ父親だ…。

でも、あそこには国民的アーティスト・ナムジュン・パイクのテレビの塔がある。これで、韓国の父兄が好きな「社会科見学」的な名分も立ったわけだ。実はこの後付けの名分も、娘が思いついたのだけど…。

当日の土曜日、午前中は学校の料理教室で、午後から出発することになった。美術館は遠く、片道1時間半かかる。まあ、遅く帰ればいいかと思っていたら、友達の一人が6時までには帰らないといけないという。観覧時間はわずかになるけど、まあ、いいか…。
で、結局、美術館に到着したのは3時50分。許された時間は40分しかない。こんなことになるとは…。(~_~;)

美術館に着くと、次女が自慢げに案内を始めた。他のところはまだしも、ここだけは娘も何回も通っているので、庭のようなものだ。
庭を通って入り口にやってくると、次女が「ここにテレビの塔があるんだよ」と。
一緒に記念撮影をしてあげると、各自のケータイを取り出して写真を撮り始めた。最近の子たちは違うなあ。
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もう少しこの作品を見ていたそうだったので、40分後に集合することにして、解放の時間を楽しんだ。

今回の目当ての企画展は多い。ずっと見たかった、建築家チョン・ギヨン氏のアーカイブ展示「絵日記」と、「若い摸索」展、そして「ビル・ビオラ展」だ。

時間がないので、次の日には会期が終わってしまう、「若い摸索」展から見ることにした。
この企画展は既に17回目を迎えており、新しい表現を模索している若手作家を選び、彼らの新作を展示している。
今回は、候補に挙げられた97名の作家の中から最終的に9名の作家を選んだのだという。それだけに、興味深い作品が多かった。

夜中に歩きながら出会った見知らぬ人の写真を撮っているキム・テドン作家、ある人たちと長い間交流し、彼らとの関係に集中しながらポートレートを描くユ・ヒョンギョン作家、手描きのアニメーションを、家の形のインスタレーション作品の中に映しているシム・レジョン作家の作品、1000ウォン札の表面を紙ヤスリで削った削りかすを展示して残りを壁に貼り付けたハ・デジュン作家の作品…。

一つひとつが、既存のメディアを使いながらも、明らかな意図が見えて興味深かった。

また、ク・ミンジャ作家は、大西洋太平洋商事という会社をつくり、異国的な商品をそこで実際に販売する、という作品を運営しており、観客との疎通を試みるという今回の趣旨に合ったものだった。

この展示の最後にあった作品が特に印象的だったのだが、長くなるので次回に。
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by matchino | 2013-06-30 15:02 | 展覧会 | Comments(0)

こんな素晴らしい美術館が! 大邱美術館1

大邱のブロガーツアーを取材しに行って、終わったその足で大邱美術館に取材に行って来た。
行けないかも知れないと思っていたけれど、行ってきて本当によかった。こんな美術館、なかなかない。
車で送ってくださった大邱市の職員の皆さん、ありがとうございます!

さて、行く前から調べていって、街の中心から遠いということは分かっていたが、車はどんどん山の中に入って行く。
気持ちよく伸びる道路をドライブ気分で走っていくと、新緑が美しい山の中腹に近代的な建物が見えてきた。
シンプルな長方形の建物の上に「d am」の文字が乗っていて、遠くからでもここが大邱美術館なのだということが分かった。
でかい。敷地面積が7万平方メートルの市立美術館としては最大の美術館なんだそうな。

大邱市の皆さんにお礼を言って車を降り、入り口に向かった。
長方形の建物の右の方には屋根の上から四角い木箱が滝のように流れ下りて、単調な外観にアクセントを与えている。
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広い前庭で何枚か写真をとって、入り口にたどり着いた。入り口は二重になっていて、外側のドアを開けると大柄な警備員が威圧するように立っている。…と思ったら人形だった。チェ・ジョンファ氏の「ファニー・ゲーム」という作品で、交差点に立っている警察官の人形の本物を苦労して探して来て作品にしたとのこと。偽物であり、本物であるというパラドックス的な作品だ。この作品は館内の至る所に置かれていた。
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これは2階のやつ

内側のドアを開けてもう一度驚いた。ピンク色に輝く、羽の生えた巨大な豚の風船が目の前に立ちはだかっていたのだ。
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豚の下には木箱が敷かれ、その上にプラスチックで作られた安物の日用品が並べられている。作家が世界を旅行をしながら集めたものたちなのだという。これらが美術館に整然と並べられると意味を表してくるようで不思議だ。
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これはチェ・ジョンファ氏の「錬金術」という企画展の作品。キッチュな色合いとバロック建築のような不思議な神聖さが私の好みだ。

ロビーを抜けると広い長方形の空間が開けていた。3階まで吹き抜けの空間で、「オミホール」と名付けられている。「オミ」って何だろう?英語かなと思ったが、後で調べてみたら、動物の母親のことをいう韓国固有語の「어미」なんだそうだ。作家たちの実験的な作品を展示する「インキュベーター」的な役割をするんだそうな。
で、ここでもう一回驚いた。オミホールの真ん中に巨大な作品が吊り下がっていた。
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「錬金術」展の「カバラ」という作品だ。緑と赤のプラスチックのザルがつながって、巨大な一つのオブジェとなっている。
これを見て思い出した。何年か前にアートソンジェセンターのカフェでこの人の作品を見たことがある。その時もザルだった。
先ほどの日用品を使った作品といい、一つひとつは消費社会の権化のような安物だが、こうしてインスタレーションとなると何か曼荼羅のような崇高な雰囲気さえ帯びてくる。

オミホールの脇にはピロティのような空間があり、そこにもインスタレーション作品がある。同じ作家の「錬金術」という作品。ザルなどの容器を組み合わせた作品だが、真ん中のやつよりは色も形も多様で美しい。まさに錬金術だ。

それにしても空間の使い方がすごく巧みだ。もちろん、作家がこの空間に合わせて制作したのだろうが、それだけではない気がする。国立現代美術館にも長方形の吹き抜けの空間があるけれど、こんな使い方はしないだろうなあとも思う。

オミホールの横には幾つかに区切られた展示室があり、「DNA(Design and Art)」展が行われていた。美術作品でありながらデザイン的な要素が入っている作品を集めた企画展で、最近話題になっている韓国の作家たちの作品をデザインという角度で照明を当てていた。

ここで出会った嬉しい面々は、ハ・ジフン氏とチェ・ウラム氏。
ハ・ジフン氏の作品は、鏡のように周りの景色を映し出す、樹脂で作られた座椅子の群れ。以前、徳寿宮プロジェクトで見た作品で、今回は透明な物も混ざっていた。
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チェ・ウラム氏は架空の動植物のようなキネティックアートを作る作家で、今まで何回か彼の作品を見たことがある。薄暗い部屋の中で光を放ちながらゆっくりと動く花のようなやつと、深海魚のようなやつ。
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動物のように少しは意思の疎通ができそうでありながら、やはり動物のように何を考えているのか分からないような感じも受ける。その形状はある意味でSFに出てくるような架空の兵器のようにも見える。しばし、物を言わず、意思も持たないオブジェと無言の対話をしている自分があった。

そしてもう一つ、気になった作品は、キム・ヨンソク氏の「チョクトリについての100通りの解釈」という作品。
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100通りのデザインのチョクトリがガラスケースに収められている。美しい。一つひとつも美しく、これが並べられていても美しい。

なんだかこの美術館、作家の選び方から展示の仕方、企画展のコンセプトまで、不思議と私のツボにしっかりはまっている。
普通の美術館だし、外国の有名な作家の作品がどーん!というようなものでもないのに、一つひとつに満足できる美術館という感じ。
で、それがなぜなのかということは、後で調べていて分かってきた。
ということで、その秘密と続きはまた次回。
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by matchino | 2013-06-01 22:25 | 展覧会 | Comments(0)

大林美術館の分館でキルジョン商街の展示

大林美術館で主催している若手クリエイターのための空間、「クスルモア タングジャン」。訳すと「玉を集めてビリヤード場」となる。大林美術館では紹介されない若手のクリエイター10人を選定し、1年間にわたって11回の展示を行う。その6番目の展示が始まった。

今回の展示は、「キルジョン商街(サンガ)」という3人のアーティストによるもの。パク・キルジョン氏が始めた独特な木工所から始まった「キルジョン商街」では、家具を作って欲しいと依頼されると、依頼主と何度も会いながら新しい形の家具を提案して販売している。
フリップボードに時々彼らのニュースが上がっていて関心を持ったが、雑誌に紹介されるなど、秘かに話題を呼んでいる。いかにもかっこいいやり方ではなく、ロゴなんかもダサかっこいい感じで味があっていい。

その彼らが企画した今回の展示の名前は、「ネ(ネ)ピョナン セサン」。訳すと「君(ぼく)の住みよい世界」とでもなるだろうか。たぶん、「イ(この) ピョナン セサン」というアパートのブランド名のパロディだ。このアパートは大林グループのブランドで、大林美術館を意識した粋なネーミングだ。
韓国の誰もが望む居住空間は、アパートを中心としたステレオタイプな形に傾倒しているが、それに対して庶民の住宅は不便な構造の家で、そこを2年くらいの周期で引越しを繰り返しながら生活している。そんな状況の中で「庶民的な」生活をしている「ぼく(あるいは、君)」にとって住みよい家の姿を模索するのが今回の展示だ。

中央線の漢南駅で降り、10分くらい歩いたところにギャラリーはあった。雑居ビルの1階の、元はビリヤード場だったところだ。
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クスルモア タングジャンという名前は前からのものだったようだ。青、赤、緑の円が並ぶビリヤード場特有の看板がそのまま残っている。中にもビリヤードのキューが残されていた。
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少し暗くした空間で、所々にある作品の電球が光っている。美術作品の展示というよりは、彼らがデザインした家具で居住空間を作り上げたという感じだ。
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一目見ただけでは何のことのないただの雑貨だが、その前で立ち止まって見てみると、ウィットに富んだ作品たちだ。
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昔、タイに行った時に泊まったホテル「リフレクションズ・ルーム」を思い出させた。彼らにデザイナーズホテルをデザインさせたら面白そうだ。
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一緒に行った次女はこの鉛筆立てが気に入ったらしく、買いたがっていた。
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後でFBの彼らのページにその旨をコメントすると、「ご注文くだされば作りますよ」との答えが帰ってきた。漢南洞にある彼らの工房を今度訪ねてみようか。
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娘がペンを指して「タングジャンだ」という。何かと思ったら、タングジャンのシンボルの円と同じ色のペンだった、という証拠写真↑

小さなギャラリーのため、交通が不便なところを訪ねたのにすぐに見終わってしまうのが残念だが、観客との相互作用的なプログラムも行っているようなので、それも合わせると、わざわざ訪問するに値するギャラリーではないだろうか。
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by matchino | 2013-05-29 21:20 | Comments(0)

Rolling! 台湾現代美術展

美術館に行ったらブログに載せる記事をほとんどその日のうちに書くのだけれど、完成しないまま月日が過ぎ去ってしまったりする。今回もそうなのだが、まだ開催中の展示だからいいだろう。

というわけで、ソウル市立美術館で行われている「Rolling! 台湾現代美術展」を見てきた。
東洋画の伝統を土台として、西洋の美術やポップアートなどの様々な手法を取り入れている状況は日本や韓国とまったく変わるところがないが、やはり台湾の作家としてのアイデンティティを模索する面においては独自的なアプローチが見られ、興味深かった。

今回気に入った作品が幾つかあった。
まず、袁広鳴という作家の作品。3枚の大きなスクリーンを使ったビデオ作品だ。川と作家の家とその隣の廃墟の映像で、カメラがまっすぐに後ろに下がっていく。
3台のカメラを並べ、前後に設置したレールかワイヤーの下をカメラが移動しているのだろう。家の外から部屋の中まで滑らかにカメラが動き、どうやって撮ったのだろうかと不思議になる映像だ。
カメラが3台ある分、視界が広くなって、肉眼でその場面を見ているような錯覚を引き起こす。
作家はこの作品で、記憶について考察したというが、うぅむ、抽象的で難しい。
で、何が気に入ったかというと、台湾の南国的風景(といってもリゾート的なそういう風景ではなくて、台湾の住宅地の日常的な風景)と、作家の家のかっこいいインテリア、そして撮影の技法だ。
360度スクリーンとか、同じような試みはされているが、対象が日常的なことと、より肉眼での視界に近づけたことによって、より臨場感が増す映像となっているのではないだろうか。

他の気に入った作品は、姚瑞中という作家の作品で、金色に彩られた仏像などの写真が壁一面に並べられ、そこにやはり金色の恐竜の模型の型が首を突っ込んでいる。
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偶像崇拝や拝金主義などの問題について批判している作品だと解説されていたが、一つの造形として興味深いものだった。


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この作品は、墨による東洋画の技法の新しい形を模索した作品。大胆な構図と旧来の水墨画にはないマチエールが加えられており、水墨画としての雰囲気は残しながら、古臭くささを感じさせない魅力的な作品となっている。

もう一つ、水墨画をモチーフにしながらより立体的なものを作り出している作品があったが、写真を撮り忘れた。水墨画の巻物をアクリルのケースに入れて、それをさらに幾つも壁面に配置している。巻物は中身がずらされて、中の方の絵(?)の端の部分が見えている。その巻物の絵もモノトーンで、アクリルケースの配置もミニマルアート的な要素が強いけれど、それが組み合わされて多様な表情を見せている。これも東洋画の新しい形を標榜する作品といってよいだろう。

今回の展示は1階だけを使った比較的小規模の展示ながら、一つひとつの作品の印象が強く、けっこうなボリュームを感じさせられる展示だった。

2階の展示室では「激動期の革新芸術〜在日作家を中心に」展が開かれていた。
日帝時代の残滓が残る時代における作家たちの展示だった。韓国でこの時代を語る時、日本に対する批判的な視点で語られることが多いが、この展示では日本人の作家が何人も紹介され、暗い歴史を振り返りながらも日韓両国の明るい未来を模索する意図が見られた。
日本人の版画家の作品を見た韓国人の観覧客が「日本人なのにこんなに韓国の歴史について知っている人がいるんだね」と話している声が聞こえてきた。

また、「作者不詳」としながら、世界的舞踏家で、日韓の難しい時代の中で苦労の人生を歩んだチェ・スンヒさんの写真が展示されており、単なる美術展というよりは、歴史の渦の中で揉まれてきた人たちの姿を美術展という形で表現したものだった。
侵略者と被侵略者という立場について言及しながらも、そういった対立関係ではなく、その狭間で苦労してきた人たちについて描いたものだった。
最近、ニュースなどであからさまに日本を批判する報道がなされている中、一歩引いてものを見ようとする立場が、私にとってはとてもありがたい。
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by matchino | 2013-05-24 20:27 | 展覧会 | Comments(0)

ヤノベケンジ氏のアーティストトーク

ソウル大学美術館で開かれていた「1970年代以降の日本美術」展、行かねばと思っていたところ、ヤノベケンジ氏のアーティストトークが開かれるということで、さっそく申し込んで、行ってきた。
今まで作家に直接話を聞くイベントに何回か参加したけれど、今回も相当興味深い話が聞けた。

大阪の人だからかもしれないが、ユーモアたっぷりの人だ。
6歳の時、廃墟となった大阪万博の跡地で「未来の廃墟」を見て感銘を受け、それが原体験の一つになっているという。
そしてアニメや特撮が好きだった少年が高校生の時に作った作品が、仮面ライダーのコスプレで、次の作品がバルタン星人のコスプレだったという。特撮に使う造形物を作る職業に就こうと思っていたが、美大に行って、「アニメや特撮は楽しいかもしれないけれど、人の作品のために作るものでしかない」と、より自由に何でも自分の思う通りに作品が作れるアートの世界に身を投じるようになったという。
大学の時から既に、放射線保護服であるアトムスーツは作っていたらしい。その時から核問題に言及を始めたという。

今回、作家に聞いてみたかったのが、原発に対して反対なのかということ。ただ問題提起をしているだけなのか、反対しているのか、ということだ。
しかし、作家がはっきりと表していたのは、核兵器はもちろん、原子力というものに対する怒りだった。アトムスーツを着てチェルノブイリを訪ねた時、放射線の危険地域で生活する幼い子供の姿に見て、「この問題について表現活動をしていることは、彼らを自分の創作活動のために利用しているだけではないか」とまで考え、悩んだという。
確かに彼の作品からシニカルな、覚めた視線を感じることはある。しかし、福島の事故の直後に発表した「Sun Child」という作品は、彼自身が恥ずかしくなるくらいの天真爛漫な表情を見せる、ある意味でベタな「希望」を表現した作品だった。この作品を作るに当たって彼自身そうとう悩んだという。しかし、恥も外聞も、芸術家としての評価も捨ててこの作品を発表したという。

また、ご自身のお父さんの話が出てきたが、かなり面白い話だった。お父さんが定年退職した時、家に帰ると家族を相手に腹話術を始めた。でも、それが下手で、声もダミ声なので、家族にそうとう不評だったという。
その後しばらくしてからお父さんの部屋に青いスーツケースが置かれていた。その中には新しい腹話術の人形があった。鼻の下にチョビ髭をはやし、髪はバーコードになって、阪神タイガースのユニフォームを着ていた。
その後、ヤノベ氏の展示で展示物が盗まれる事件が起こった。彼が3歳の息子のためにつくった子供用のアトムスーツだった。やがてそのアトムスーツが見つかった。彼のお父さんの部屋からだった。そのアトムスーツの中にはあの腹話術の人形がピッタリと収まっていた。
これが彼の作品によく登場する「トらやん」の始まりだった。
「トらやん」という名前はお父さんが付けたという。まさに大阪のおっさんらしい命名で、アートとかサブカルチャーとは程遠い名前だと、ヤノベ氏自身が話していた。
途中、「トらやんの冒険」という動画を見せてくれた。これが爆笑もので、特にお父さんの腹話術が笑える。でも、「放射能が来たらシェルターに入るんだよ」と何度も孫に語りかける場面は、孫に対する愛情が伝わってきて泣かせる。

ヤノベ氏の作品を見ると、社会派のアーティストなのかと思ったりもするが、話を聞いていると、制作活動をする中で変わっていったのではないかと感じさせられる。最初はただのオタクで、それがアートという分野に目覚め、パフォーマンスのためにチェルノブイリなどを訪ねる中で社会の問題に対してより強く主張するようになっていったのではないかと思う。彼の作品から怒りを感じないのは、社会批判的な内容を持っていたとしても、彼の中にある制作を楽しむ心と、人への愛があるからではないだろうか。
原発に対する怒りも、社会の悪に対する怒りからではなく、人に対する愛から来ているように感じるのだ。最近、北野武監督とのコラボレーションで怒りを表現した作品を発表したというが、それさえユーモラスさを隠せない。
個人的には、この、井戸からお化けのような生物が出てくるインスタレーションのこの生物の顔は、巨神兵を思い出す。影響は受けているんだろうか。

ヤノベ氏の話を聞いていると共感しまくってしまう。同世代の日本の男として、共感するところばかりだった。
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by matchino | 2013-04-27 14:18 | 展覧会 | Comments(2)