漢陽都城案内センターとなった日本家屋

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11月、ソウル市長の公館として使われていた日本家屋が漢陽都城案内センターとして生まれ変わった。知り合いが何人か行ってきて、よかった!という話が上がっていたので、行ってみることにした。

4号線の漢城大入口駅で降りて、大学路方面に向かう。恵化門に上がって、都城の上を歩き、途切れたところで降りると、守衛の詰所っぽい建物が見えたので行ってみると、やはりそこが漢陽都城案内センターだった。
庭の階段を上がると、切妻屋根の東西方向に長い家があった。
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昔の日本家屋らしい雰囲気は外からではよく分からない。壁も真っ白にきれいに塗られていた。
入る前に、庭が気になったので、庭を回ってみた。家の脇に芝生が植わった広い庭があって、赤い実を付けた木がある。遠くには北漢山も見えて眺めのよい空間。実はここは都城の上だということが分かった。
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ドアを開けて中に入ると正面に案内デスクがあり、右側には漢陽都城に関する展示があった。
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気になったのは、真ん中にある大きなジオラマ。横のモニターの説明に対応して、ジオラマに説明が投影されるようになっていた。どこかと思ったら、恵化洞の一帯だった。説明の内容は興味深いし、ジオラマに投影される図解は分りやすそうなんだけど、同時に見られないので結局分からない。音声で説明してくれたらいいのに…。
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展示室の横は屋根の下でありながら地面が見えていて、都城がどのように積まれているのか説明してあった。その横には部屋の名残があった。ところどころに説明のパネルがあるため、展示の一部であることが分かる。そして壁の一部は開いたままになっている。その向こうには北漢山。
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スリッパに履き替えて上がる2階には、この家についての展示がなされていた。
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1941年に建てられたこの家は、朝鮮映画製作株式会社の社長である田中三郎氏の私邸だった。この付近は日本人が多く住んでいた地域だという。解放後は韓国人の企業家の私邸として使われた。1959年から79年までは大法院(最高裁判所)の所有になって、裁判官の公館として使われた。その後はソウル市に所有権が移り、2013年までソウル市長の公館として使われた。現市長のパク・ウォンスン氏もここを使用したという。
そして建築家のチェ・ウク氏によって漢陽都城案内センターとしてリノベーションされた。その時の原則は、なるべく最初に建てられた時の姿を残すこと。展示のための壁などは別途につけられたが、柱なども同時のものをそのまま削って使っている。天井は取り払われて、木造のトラスが見える。
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部屋の南側は、ちょっと変わった障子が設えてあった。古いものと新しくつくったものがはっきりと分かりながらも、それらが違和感なく調和している。リノベーションした建築家の実力だな。こういった事例がもっと紹介されて、多くの自治体で適用されて欲しいなと思う。
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2階の大きな展示室の反対側には小さな展示室があって、ここで暮らしたソウル市長たちのゆかりの品々と、ソウル市長たちのこの公館に関するインタビュー映像が流れていた。呉世勲元市長の「スプーンほどの大きなゴキブリが出て、娘たちが騒いだ」という話が印象的だった。

1階には降りてくると、階段の左にある小さなカフェで妻と娘がココアを飲んでいた。私もコーヒーを注文したら、なかなかかわいいマグで出てきた。
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カフェの窓から庭が眺められる。庭が広く、高台にあるため、とても気持ちがいい。「こんな家にいつ住めるようになるかなあ」と妻がため息をついた。
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展示内容が充実しているので、時間をとって訪ねたい空間。もちろん、軽い気持ちでその空間を満喫していってもいいのでは。
オススメ。

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# by matchino | 2016-12-11 21:11 | 建築 | Comments(0)

キリンクリムの「韓国現代建築の今日」

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「現代建築の断面」という韓国・国立現代美術館のプログラムがあるらしい。そこで映像制作社「キリンクリム」の「韓国現代建築の今日」という映像が上映されるということでさっそく娘を連れて行ってきた。

「キリンクリム」は、チョン・ダウンさん、キム・ジョンシンさん夫婦の建築映像制作ユニットで、私は彼らが撮った伊丹潤の建築映像に感動して憶えていた。

伊丹潤の映像のトレーラーがYouTubeに公開されていた。


その後、このブログでも何度か紹介したランスキー先生こと金蘭基氏のイベントで偶然にも「キリンクリム」のキム・ジョンシンさんに出会い、その後も何度かお会いしている。
時には私が主催している街歩きイベント「マチノアルキ」の出発の場所にたまたま居合わせて、一緒に歩いたこともあったりと、不思議な縁を感じさせる。

さて、今回上映する映像は、韓国の今を代表する8人の建築家の作品を一つひとつ選んで、建築家自身によるコンセプトの紹介と、評論家による解説がなされる中で、建築の美しい映像が流れるもの。
建築自体の美しさもさることながら、それを切り取る映像が、言葉を失うほどに美しい。一つひとつの建築をぜひ訪問してみたい。

映像の一部がYouTubeにあった。

映像を見終わった後は、「キリンクリム」の二人と建築家たちのトークの時間。
実は一番前の席には、この映像に出てきた建築家と評論家たちが勢ぞろいしていたのだ。私も何度かお会いした劉成龍教授が来ているのは分かったけれど、まさかこの建築家たちがほとんど参加しているとは思ってもみなかったので驚いた。

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トークの最初にチョン・ダウンさんは「勇気の問題だった」と語った。これだけの建築家の映像を撮ることに対して「応じてくれるだろうか」という心配はあったけれど、勇気を持ってお願いしてみると応じてくれたというのだ。もちろん、実力と実績があったから可能だったことは確かだが、「勇気」という言葉にとても感銘を受けた。
チョン監督には2回お会いしたことがあるが、いつも彼女の情熱に感心する。そして建築に対する愛情を感じるひと時だった。
「建築家の方たちが愛情を込めて建てたこの建築をいかに撮るか」という話をしていたが、建築家の愛情と映像作家の愛情が一つになって生まれた作品だと思う。
また、今回の映像を観て、チョン監督の「建築が空間と時間の芸術であるため、それを表現するのには写真より映像がふさわしい」という言葉に強く共感した。私は今までは建築を写真でしか撮ったことがないけれど、今度は動画で撮ってみよう。

現在、キリンクリムは伊丹潤のドキュメンタリーをより長編の作品にする作業をしているという。どこで上映されるようになるかはまだ分からないけれど、より多くの人たちの目に触れるようになればいいと思う。

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# by matchino | 2016-12-08 22:20 | 建築 | Comments(0)

培花女子高の近代建築 その2

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培花女子高の近代建築めぐりの続き。
生活館の上にあるのは本館。
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生活館もそうだけれど、シンメトリーになっているのは西洋建築の特徴だ。中央の玄関を中心に、両側に突出した部分があり、切妻屋根の三角と、屋根の上の三つのドーマーが統一感を与える。
この大きめのドーマーが三つあるのは、貞洞にある培材学堂の建物に似ているな。メソジスト派の宣教師が建てたからなんだろうか。あるサイトによるとアメリカのカントリーハウスの様式なんだとか。

もう一つの、1915年に建てられた近代建築、科学館は運動場の片隅にあった。
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レンガ造りの3階建てのように見えるが、あるサイトによると4階建てだという。屋根裏の4階があるんだろうか。中央の突出した部分は階段だろうか。
運動場にそのまま建てられている感じで扱いがちょっとぞんざいな気がするが、建てられた当時はどんな感じだったんだろうか。


この他にも面白そうな建物がありそうだったけれど、女子高生に混じっておじさんが違和感出しまくりな気がしたので退散。今度はこの上にある大学のほうを回ってみようかな。

そうそう、今回参考にした「あるサイト」というのはこのサイト。写真と細かい説明が素晴らしい。

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# by matchino | 2016-10-03 20:15 | 建築 | Comments(0)

培花女子高の近代建築 その1

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会社からの帰り、横断歩道に一枚のポスターが貼ってあった。9月9日、培花女子高で学園祭を行うというのだ。培花女子高には、最近文化財に指定されたレンガ造りの建物があるということを思い出して、「この時しかない!」と思った。なぜかというと、数年前から大学以外の学校は外部の人が入れなくなっているのだ。
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培花女子高はかつて培花学堂と呼ばれ、アメリカのジョセフィン・キャンベル宣教師が1898年に建てた学校。
キャンベル宣教師の足跡には、もう一ヶ所行ったことがある。社稷洞311番地の丘の上に建つ2階建ての洋館がキャンベル宣教師が生活していた家屋だということ。

もっともこの家屋は、この地域の再開発のための組合事務所として使われていて、文化財を残そうとする人たちの意に反して、この家を含むこの一帯をアパート団地にしようとしている人たちなわけだ。

さて、危機に瀕している家屋とは違い、この学校の中の建物はしっかりと保存されている。
門を入ると正面にレンガ造りに瓦屋根の建物が見えた。生活館だ。1916年に宣教師たちの住宅として建てられた。
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地上2階で斜面を利用して半地下がつくられている。西洋式のレンガ造りの構造に、韓屋の瓦屋根が乗っている韓洋折衷様式というのが説明だけれど、瓦は赤いので、中国式じゃないかなと。よくは知らないけれど。
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裏の方へ回ってみると、キャンベル宣教師の胸像。生活館の瓦屋根を背景に、フォトジェニックな空間となっている。
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生活館の写真を撮っていると、隣の白い建物が気になった。モダニズム建築っぽい感じで、レンガでつくったらしい網のような装飾がかっこいい。
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いつ頃建てられたのか気になってみてみると、定礎石があった。1958年12月11日。それだけが分かった。
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さらに気になって調べてみると、なんとか見つかった。現在は図書館として使われているけれど、建てられた当時は大講堂として使われていたらしい。1959年9月に完工し、当時、弘益大の教授だったキム・チャンジプ教授の設計だという。

さて、少し長くなりそうなので、続きは次回!

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# by matchino | 2016-09-15 21:49 | 建築 | Comments(0)

秋夕のソウル美術館めぐり

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秋夕の連休、初日は美術館めぐり。
まずはソウル市立美術館へ。
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メディアシティソウルという市立美術館が開催しているビエンナーレの展示がされていた。
チェ・ウラム氏のキネティックアート以外はそれほど気になる作品がなかった。
昔はその作品が意味するところが解らなくても楽しめたのに、最近は楽しめなくなってきたな…。
それよりは、Gana Art Centerから寄贈された作品のコレクション展の絵画がとてもよかった。版画や油絵なのだが、なんだか心が動かされ、ずっと見ていたいような気になる作品。
年をとってきて、好みが変わってきたのかもしれないな。

さて、次は国立現代美術館へ。水曜日は6時から無料観覧なのだ。
前回、見そこねた「テンプル」という題名の船のオブジェ。
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いい感じの空間で、たくさんの人たちが思い思いに過ごしていた。食べたり飲んだりするのが禁止されているかと思ったら、まったくそういうこともなく、とても自由だ。

今回はどんな展示があるのかも知らないで行ったけれど、一つの大きな作品が、ヒュンダイ自動車の提供で行われている、キム・スジャという作家の展示だった。
最初は「心の幾何学(Archive of Mind)」という作品。
観覧者が参加する形の作品で、10人ほどで一緒に入って説明を聞いてから作品をつくる行為に参加する。
広い展示室の中には長さ19mの楕円形の木のテーブルが置かれていて、その上に無数の玉があった。参加者は粘土をもらって、一人1つずつ粘土の球を作るのだ。楕円形のテーブルの周りには36脚の椅子があって、そこに座って粘土の玉を作る。
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最初に言われたのは、椅子を動かさないことと、球形以外の形はつくらないこと。球形を作る作業は、角張った心を丸くしていく修行のような行為で、一人ひとりが自分の作業に集中できるように、椅子の位置を少しずつ離しているのだという。
さっそく粘土をもらって娘二人と一緒に玉を作り始めた。
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簡単なようで、けっこう球形を作るのが難しい。下の娘は手が小さいこともあってうまく作れなかったので、私が仕上げをしてあげた。
参加者たちも黙々と粘土を丸めているため、静かだ。効果音として石が転がるような音が聞こえるのも面白い。
作り終わって、次の部屋には他の作品が展示されていて、映像作品もあった。映像はどこかの国で、何かの植物で敷物を作る過程を映したものだったけれど、先ほど粘土を丸めたからか、「手で何か工芸品を作るっていいなあ」という気がした。
心の修養というか、心が落ち着くというか、自然の材料を使って、手で何かを作るという行為は、心にいいのかもしれない。昔、燃える火を見つめていたら、とても心が落ち着いたことがあるけれど、その時の感覚と似ている。だとすると、陶器を焼くという行為は、土で形を作り、火で焼くということで、心の修養にとてもいいのではないかという気がしてきた。

この作家の作品はこの他にも中庭に展示されていた。四角い中庭の真ん中に鏡のような敷物が敷かれ、その上にストライプの模様が入った長い球形が立っている「演繹的なオブジェ」という作品と、中庭の周りのガラスに虹色の光の筋を見せるフィルムを貼った「呼吸」という作品。
作品の意図は分からないけれど、力を感じる。さらに夕方の外の光の中でとても美しかった。
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出てくると、「テンプル」が月光と照明に照らしだされていた。夜もいいな。
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美術の世界から少し離れて、久しぶりに美術館に行ってみると、より自分の心が行く方向がはっきりとしてきたような気がする面白い一日だった。

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# by matchino | 2016-09-14 23:25 | 展覧会 | Comments(0)