<   2013年 06月 ( 4 )   > この月の画像一覧

娘と訪ねる国立現代美術館 その1

小学4年生の次女が、友達と一緒に美術館に連れていって欲しいといい出した。
そうかそうか。じゃあ行こうということで、完全に私の趣味を中心に場所選び。
個人的にずっと見たかった展示があったので、国立現代美術館に行くことにした。
なんてえ父親だ…。

でも、あそこには国民的アーティスト・ナムジュン・パイクのテレビの塔がある。これで、韓国の父兄が好きな「社会科見学」的な名分も立ったわけだ。実はこの後付けの名分も、娘が思いついたのだけど…。

当日の土曜日、午前中は学校の料理教室で、午後から出発することになった。美術館は遠く、片道1時間半かかる。まあ、遅く帰ればいいかと思っていたら、友達の一人が6時までには帰らないといけないという。観覧時間はわずかになるけど、まあ、いいか…。
で、結局、美術館に到着したのは3時50分。許された時間は40分しかない。こんなことになるとは…。(~_~;)

美術館に着くと、次女が自慢げに案内を始めた。他のところはまだしも、ここだけは娘も何回も通っているので、庭のようなものだ。
庭を通って入り口にやってくると、次女が「ここにテレビの塔があるんだよ」と。
一緒に記念撮影をしてあげると、各自のケータイを取り出して写真を撮り始めた。最近の子たちは違うなあ。
e0160774_1564714.jpg

もう少しこの作品を見ていたそうだったので、40分後に集合することにして、解放の時間を楽しんだ。

今回の目当ての企画展は多い。ずっと見たかった、建築家チョン・ギヨン氏のアーカイブ展示「絵日記」と、「若い摸索」展、そして「ビル・ビオラ展」だ。

時間がないので、次の日には会期が終わってしまう、「若い摸索」展から見ることにした。
この企画展は既に17回目を迎えており、新しい表現を模索している若手作家を選び、彼らの新作を展示している。
今回は、候補に挙げられた97名の作家の中から最終的に9名の作家を選んだのだという。それだけに、興味深い作品が多かった。

夜中に歩きながら出会った見知らぬ人の写真を撮っているキム・テドン作家、ある人たちと長い間交流し、彼らとの関係に集中しながらポートレートを描くユ・ヒョンギョン作家、手描きのアニメーションを、家の形のインスタレーション作品の中に映しているシム・レジョン作家の作品、1000ウォン札の表面を紙ヤスリで削った削りかすを展示して残りを壁に貼り付けたハ・デジュン作家の作品…。

一つひとつが、既存のメディアを使いながらも、明らかな意図が見えて興味深かった。

また、ク・ミンジャ作家は、大西洋太平洋商事という会社をつくり、異国的な商品をそこで実際に販売する、という作品を運営しており、観客との疎通を試みるという今回の趣旨に合ったものだった。

この展示の最後にあった作品が特に印象的だったのだが、長くなるので次回に。
[PR]
by matchino | 2013-06-30 15:02 | 展覧会 | Comments(0)

こんな素晴らしい美術館が! 大邱美術館 2

大邱美術館の続きを投稿するのを忘れてた。で、前回の続き。

さて、1階の展示室を見終わると動線が2階の展示室へ向かう。2階では「身体の現在」展が行われていた。「身体」に対する現代的な変化について考察した作品だ。
ここでよかったのが、リ・ウ氏の作品、の裏だ。展示室の真ん中に壁が作られており、リ・ウ氏の作品がその壁一面に並べられていたが、その裏に回ってまた驚いた。窓に面した広い展示空間の真ん中に黒い物体が置かれていた。ベッドの上にドラム缶などを詰め重ねて焼いたような真っ黒な作品だが、異様な存在感だ。
e0160774_22545252.jpg
写真を撮るのを忘れたので、大邱美術館のサイトから拝借しました。

展示空間の使い方としてはすごく贅沢な使い方だと思う。でも、そのオブジェ単体ではなくインスタレーションのように部屋全体で一つの作品のようにその存在を主張しているのだ。このように展示したのは作家のアイデアなんだろうか、あるいはキュレーターのアイデアなんだろうか、気になる。
e0160774_22545329.jpg
これはその裏の、リ・ウ氏の作品。


2階の反対側の展示室は作家イ・ワン氏の「ああ、純情」展。大邱美術館では有望な国内の若手作家を発掘・支援する「Y artist Project」が実施されており、その一環としての展示だという。イ・ワン氏は日常生活の中で慣習や他者からの視線に影響されて生きる私たちの現実をインスタレーションで表現している。
この人の作品はちょっと分かり難かったが、一つ気になったのは「ウリ(私たち)になる方法」という作品。部屋いっぱいに量りが並べられていて、その上にいろんな物が載せられている。どの量りの上の物も一部だけだったりしてガラクタになっている。よく見ると、すべての量りは5.06キロを指しており、空の量りだけが0を指していた。そこにいた係の人に聞いてみると、作家が一つひとつ量りながらぴったり重さを合わせたという。すべての物が自分の身を削り、機能を喪失しながら「ウリ(私たち)」になろうとしているのだ。
e0160774_22545457.jpg

後になって考えてみると、この美術館の姿をよく表している作品のように思えてくる。
韓国人は「ウリ」という言葉が好きだ。それだけ団結心が強いし、お互いに一つになろうとする気持ちが強い。だからその精神自体は素晴らしいものだし、否定するつもりは全くない。しかし、「ウリ」を語るがための安易な行動が、外国人の私にとっては気になることがあるのだ。「韓国を代表するもの」の表面的な形ばかり真似て、韓国のアイデンティティを表現したつもりになっていたり。
しかし、この美術館にはそのような安直さはまったく見られない。国内の作家の作品が圧倒的に多いが、その背後に確固たる思想があると感じられる。国内の作品に対する変な固執がある訳でもないし、海外の作品に対する「かぶれ」や盲目な「礼賛」のようなものも感じられない。純粋に、今、何をどのように展示するべきかということに集中しているように見える。

ある記事を読むと、館長は30年の経歴を持つキュレーター出身者なのだという。サムソン美術館ができた時にトップで採用され、海外の作品をコレクションする流れの中で国内の作家の作品を購入しようと提案した人だったという。そして、全世界の美術館を回りながら、韓国的美学のアイデンティティを国際的な視点で見つめる必要性を感じたという。そのような意思がはっきりと感じられる美術館だった。

今の展示は6月まで行われ、7月からは草間彌生の企画展が予定されている。ほとんど全ての展示室が草間氏の作品で埋め尽くされるという。
見に行きたいけど、ソウルから往復8万ウォンは大きな出費だなあ。大邱市よ、苦しゅうない、もそっと近うよれ。
[PR]
by matchino | 2013-06-15 22:36 | Comments(0)

フェーリス・カトゥス・アニマトゥスって何?

日曜日の深夜0時(月曜日のというべきか?)にたまたま妻がテレビを付けたら「文化チェッカルピ(しおり)」という番組をやっていて興味を持った。
途中から見たのだけれど、何か骸骨をたくさん作っている作家の雑談的なインタビューをしていた。「何だこの人は?」と思ったら、どこかで見たような骸骨だ。それはトムとジェリーの骨だった。



え、何それ?
ネコとネズミのってこと?



じゃなくて、トムとジェリーの骨なのだ。
正確にいうと、「フェーリス・カトゥス・アニマトゥス」と「ムス・アニマトゥス」の骨だ。これはトムとジェリーの学名らしい。
e0160774_22375546.jpg

この作品の作家であるイ・ヒョング氏は、アニメのキャラクターの解剖学的な模型を作っている。アニメのキャラクターらしいデフォルメされた形で、アニメの中のオーバーアクションで固まっている。
ヴェネチア・ビエンナーレでも紹介されたことのある作家で、私の記憶をたどっていくと、国立現代美術館で開催されていた「Made in Popland」展で見たのだった。
この作家、動物の立場になって世界を見るための装置を作ったり、自分のコンプレックスを克服するために顔の一部を拡大して見せるヘルメットを作ったりしていたらしい。その流れの中でこのような作品にたどり着いたようだ。
スイス・バーゼルの自然史博物館でも、このディズニーキャラクターの骨が展示されたらしい。美術の側からではなく、科学の側からこのようなアクセスがあったというのが面白い。

今回見たKBSの「文化チェッカルピ」という番組、「文化のしおり」なんて何十年前のネーミングだ!と思ったりもするけれど、内容はなかなかいいんじゃない?また来週も見よう。
[PR]
by matchino | 2013-06-14 22:18 | 展覧会 | Comments(2)

こんな素晴らしい美術館が! 大邱美術館1

大邱のブロガーツアーを取材しに行って、終わったその足で大邱美術館に取材に行って来た。
行けないかも知れないと思っていたけれど、行ってきて本当によかった。こんな美術館、なかなかない。
車で送ってくださった大邱市の職員の皆さん、ありがとうございます!

さて、行く前から調べていって、街の中心から遠いということは分かっていたが、車はどんどん山の中に入って行く。
気持ちよく伸びる道路をドライブ気分で走っていくと、新緑が美しい山の中腹に近代的な建物が見えてきた。
シンプルな長方形の建物の上に「d am」の文字が乗っていて、遠くからでもここが大邱美術館なのだということが分かった。
でかい。敷地面積が7万平方メートルの市立美術館としては最大の美術館なんだそうな。

大邱市の皆さんにお礼を言って車を降り、入り口に向かった。
長方形の建物の右の方には屋根の上から四角い木箱が滝のように流れ下りて、単調な外観にアクセントを与えている。
e0160774_2226348.jpg

広い前庭で何枚か写真をとって、入り口にたどり着いた。入り口は二重になっていて、外側のドアを開けると大柄な警備員が威圧するように立っている。…と思ったら人形だった。チェ・ジョンファ氏の「ファニー・ゲーム」という作品で、交差点に立っている警察官の人形の本物を苦労して探して来て作品にしたとのこと。偽物であり、本物であるというパラドックス的な作品だ。この作品は館内の至る所に置かれていた。
e0160774_2226360.jpg

これは2階のやつ

内側のドアを開けてもう一度驚いた。ピンク色に輝く、羽の生えた巨大な豚の風船が目の前に立ちはだかっていたのだ。
e0160774_2226865.jpg

豚の下には木箱が敷かれ、その上にプラスチックで作られた安物の日用品が並べられている。作家が世界を旅行をしながら集めたものたちなのだという。これらが美術館に整然と並べられると意味を表してくるようで不思議だ。
e0160774_2226529.jpg

これはチェ・ジョンファ氏の「錬金術」という企画展の作品。キッチュな色合いとバロック建築のような不思議な神聖さが私の好みだ。

ロビーを抜けると広い長方形の空間が開けていた。3階まで吹き抜けの空間で、「オミホール」と名付けられている。「オミ」って何だろう?英語かなと思ったが、後で調べてみたら、動物の母親のことをいう韓国固有語の「어미」なんだそうだ。作家たちの実験的な作品を展示する「インキュベーター」的な役割をするんだそうな。
で、ここでもう一回驚いた。オミホールの真ん中に巨大な作品が吊り下がっていた。
e0160774_2226582.jpg

「錬金術」展の「カバラ」という作品だ。緑と赤のプラスチックのザルがつながって、巨大な一つのオブジェとなっている。
これを見て思い出した。何年か前にアートソンジェセンターのカフェでこの人の作品を見たことがある。その時もザルだった。
先ほどの日用品を使った作品といい、一つひとつは消費社会の権化のような安物だが、こうしてインスタレーションとなると何か曼荼羅のような崇高な雰囲気さえ帯びてくる。

オミホールの脇にはピロティのような空間があり、そこにもインスタレーション作品がある。同じ作家の「錬金術」という作品。ザルなどの容器を組み合わせた作品だが、真ん中のやつよりは色も形も多様で美しい。まさに錬金術だ。

それにしても空間の使い方がすごく巧みだ。もちろん、作家がこの空間に合わせて制作したのだろうが、それだけではない気がする。国立現代美術館にも長方形の吹き抜けの空間があるけれど、こんな使い方はしないだろうなあとも思う。

オミホールの横には幾つかに区切られた展示室があり、「DNA(Design and Art)」展が行われていた。美術作品でありながらデザイン的な要素が入っている作品を集めた企画展で、最近話題になっている韓国の作家たちの作品をデザインという角度で照明を当てていた。

ここで出会った嬉しい面々は、ハ・ジフン氏とチェ・ウラム氏。
ハ・ジフン氏の作品は、鏡のように周りの景色を映し出す、樹脂で作られた座椅子の群れ。以前、徳寿宮プロジェクトで見た作品で、今回は透明な物も混ざっていた。
e0160774_2226670.jpg



チェ・ウラム氏は架空の動植物のようなキネティックアートを作る作家で、今まで何回か彼の作品を見たことがある。薄暗い部屋の中で光を放ちながらゆっくりと動く花のようなやつと、深海魚のようなやつ。
e0160774_222664.jpg

e0160774_2226761.jpg


動物のように少しは意思の疎通ができそうでありながら、やはり動物のように何を考えているのか分からないような感じも受ける。その形状はある意味でSFに出てくるような架空の兵器のようにも見える。しばし、物を言わず、意思も持たないオブジェと無言の対話をしている自分があった。

そしてもう一つ、気になった作品は、キム・ヨンソク氏の「チョクトリについての100通りの解釈」という作品。
e0160774_2226899.jpg

100通りのデザインのチョクトリがガラスケースに収められている。美しい。一つひとつも美しく、これが並べられていても美しい。

なんだかこの美術館、作家の選び方から展示の仕方、企画展のコンセプトまで、不思議と私のツボにしっかりはまっている。
普通の美術館だし、外国の有名な作家の作品がどーん!というようなものでもないのに、一つひとつに満足できる美術館という感じ。
で、それがなぜなのかということは、後で調べていて分かってきた。
ということで、その秘密と続きはまた次回。
[PR]
by matchino | 2013-06-01 22:25 | 展覧会 | Comments(0)