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フォルカート・デ・ヨングの個展

チェ・ウラムの展示を見終わった後はその周辺のギャラリーを回った。
その中で気になったのが、アラリオギャラリーで行われている、オランダの作家、フォルカート・デ・ヨングの個展。
この展示を紹介していたサイトでカラフルに色付けされたオブジェの写真が目を引き、興味を持っていた。
その写真ではいろいろな素材によるミクストメディアに見えたが、実際に見てみると、ミクストメディアであることは確かにそうなのだけれど、素材のほとんどが安っぽい石油系の樹脂だった。
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実物大のピエロなどのオブジェで、合成の塗料そのままの色で無造作にペイントされている。何かの展示が終わって廃棄されたマネキンが並んでいるような感じだ。
作家は使い捨ての製品を大量生産する社会に対する批判としてこれらの作品を作ったという。
そして、この人形が表しているのは、オランダがニューヨークを植民地にしている時、マンハッタン島をインディアンから不当に買収したピーター・ミニュイットだという。素材といい、題材といい、人間の罪深さとか浅はかさを考えさせられる作品だ。
だが、実はこの作品を見た時、そのような不快感をあまり感じることはできなかった。何か、いろいろなことに鈍感になっている自分の姿を見る。
ショッキングな表現方法を使った作品も見慣れてしまい、また、戦争や侵略といった問題に対してもテレビのニュースたなどで見られる日常となってしまった。その中で感覚が麻痺してしまっているのではないかという危惧が襲ってくる。
作家の意図しないところで世の中の不条理(「自分自身の」とすべきか?)について考えるきっかけとなった。

展示は12月9日まで。
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by matchino | 2012-11-27 22:25 | Comments(2)

チェ・ウラムの優雅なキネティックアート

景福宮の隣にあるギャラリー・ヒョンデで行われているチェ・ウラムの個展がテレビのニュースで紹介されていて、妻が教えてくれた。
数ヶ月前にこのギャラリーの別館でも展示が行われていたが、今回はもう少し大きな展示となった。
さっそく息子を連れてギャラリーを訪ねた。
想像上の動物を模したロボット(想像上の動物なので、「模した」ものなのかは不明だが)などのキネティックアートをつくる作家だ。今回は8点の作品があり、系統は似ているにしろ、一つひとつが違った面白みのある作品だった。

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一番気に入ったのは、この「Custos Cavum」という作品。昔、この世界ともう一つの世界が穴でつながっていたという架空の話の中に登場する動物だ。二つの世界をつなぐ穴が塞がないように牙で掃除をしていたセイウチのような動物なのだそうだ。
この動物がゆっくりと呼吸しているように腹部が動き、この動物に寄生した生物がゆらゆらと動いている。
ロボットとしてデザインされた形状だが、動きがすごく自然で、息をしているような姿に、本当に生きている動物のような錯覚に陥ってくる。
「動く」=「生きている」ということではないにも拘らず、動くだけでそれが生命を持ったように錯覚するのは人間の習性なのだろうか?あるいは映画などで「知能」を持ったロボットが出てくるSFをたくさん観てきたせいなのだろうか?
考えてみると、生と死の境界線もはっきりしていないし、生命を持ったものと持っていないものとの境界線もはっきりしていない。さらに、「知能」を持ったと思わせるロボットが持ったものは本当に知能なのだろうか? そんなことを考えさせられる作品たちだった。
それにしても、どの作品も動きがきれいだ。彼の作品をよく知っているらしい人が「チェ・ウラムの作品は動きが優雅だよなあ」と話していた。
前回彼の作品を見た時は、「デザインがギーガーみたいだ」という感想くらいしか持たなかったが、今回は作品の精巧さや動きの美しさなどがよくみえた展示だった。



これは外のウィンドウに展示されていた作品。
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by matchino | 2012-11-20 22:08 | 展覧会 | Comments(0)

韓国大統領選挙戦、単一化パフォーマンス

仕事でソウル鍾路に出てみると、町の至る所にA4サイズくらいのカラフルなポスターが貼られていた。
韓国の大統領選挙に立候補している、文在寅(ムン・ジェイン)候補と安哲秀(アン・チョルス)候補の顔写真が半分ずつで、一つの顔になっているポスターだ。色は画像レタッチソフトでカラフルに塗り替えられている。そして、下には「CO - INNOVATION」の文字。なかなかいいグラフィックだ。

三つ巴になっている大統領選挙戦で、保守側は朴槿恵候補だが、革新側は文候補と安候補に割れており、このまま行くと保守側の勝利に終わる可能性が高い。そのため、革新側にとっては候補の単一化が最重要課題となっている。
そして、単一化のための会談が今日、行われた。このポスターはそのための運動なのだろうということは容易に想像できたが、どこかの大学生がしたんだろうか?
単一化のための会談に関するニュースを見た後で思い出して検索してみると、こんなニュースが出ていた。
要約するとこんな感じだ。

「在寅・哲秀、クロス! 単一化パフォーマンス」
6日の午前0時、ソウル鍾路のタプコル公園前。4人の男女がポスターを町の至る所に貼り始めた。文・安候補の笑顔が半分ずつ合成された姿と「CO + INNOVATION」の文字。両候補の単一化を望むポスター貼りパフォーマンスだった。
主導したのはポップアーティストのイ・ハ作家。
「単一化がなされるかどうか不安になっている市民に小さな力になりたかった」と作家は語る。
しかし、この作家の行為は不法行為に当たる。それでも作家は、「私の作品が市民たちに意味のあるメッセージを送れるのなら、それで満足だ」と語った。





こういうゲリラ的なパフォーマンスの、その現場を目撃できたのが楽しかった。
果たして、彼の心が通じたのか、両候補の会談はうまくいき、候補登録までに単一化することで合意したという。
まだ、どういう方法で、誰に単一化されるのかは未知数で、越えるべき山はまだまだ残っているのだけれど。
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by matchino | 2012-11-06 22:56 | イベント | Comments(0)

アラリオギャラリーで名和晃平の個展

清潭洞にあるアラリオギャラリーで行われている名和晃平の個展を見に行ってきた。
ギャラリーに入ると、まず、鏡のように光る女性の像が立っている。その半分は波打つ形に変形しているけれど。その後ろには、同じように人を象った波打つ形が様々な素材で作られている。
素材は何かの樹脂のようだが、その形があまりにも滑らかで、どうやって作ったのか気になる。

その隣の部屋は、入った途端、4頭(?)のシカがこちらを見ている。「4頭(?)」とハテナ付きで書いたのは、そのうち2頭は合体して1頭になっているからだ。
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で、そのシカは透明な大小様々な大きさのビーズに覆われている。光の屈折によってシカの表面はよく見えないが、大きなビーズを通して見ると、中にあるのはシカの剥製らしい。
透明なビーズが美しく、どうやって作られているのだろうかと不思議になる。また、胴体が重なって頭が二つ、脚が8本になっているが、どうやってつなげているのだろうか。
後の2頭は壁にかけられているが、大小のビーズの配置がまったく同じだ。
美しく、すごく存在感のあるオブジェではあるけれど、何を意味するものなんだろうか。

次に2階に上がった。暗くなっており、壁も真っ黒に塗られている。どこからか、水の音が聞こえてくる。
真っ暗な部屋に入ってみると、床に二つの長方形の池があった。池は白く光っており、ポコポコと小さな音を立てながら、無数の泡ができてははじけている。
泡は格子状に発生している。石鹸の泡のように若干の粘性があり、不思議な質感を持っている。その光景はあまりにも美しくて、不思議だ。
その隣の池は泡が斜めの格子状になっており、二つの池が対になっているのが分かる。

その次の部屋は壁が白く、その真ん中に、二つの透明な箱が置かれている。
その箱は、何層にも重なった透明な板でできており、その上には半透明の点が格子状に並んでいる。
上から見ると、その点が幾何学的な模様を作り出す。見る角度によってその模様は変わる。
ずっと見ていると、霧に包まれた山の頂上から下を見ているような感覚になってくる。

今回は、これらの4種類の作品が展示されていた。
無機質でありながら自然を感じさせられるような不思議な感覚だ。
ギャラリーで配られているチラシの説明によると、シカを覆っていたのは「PixCell」というものだという。
「PixCell」とは「ピクセル(pixel)」と「細胞(cell)」を合わせた造語だという。
デジタルの時代となって、すべてのものが「PixCell」で覆われるようになったということだろうか。
シカも「PixCell」で覆われていたし、休みなく生じては消えていく泡も「PixCell」となっおり、透明な板の上に置かれた「PixCell」がさまざまな模様を描き出している。
それがコンピュータのモニター上に描き出されたものよりも無機質な形であるにもかかわらず、かえって実体を感じさせるのはなぜなのだろう。
それは素材のためではないだろうかと思う。すべての作品で、素材に対するこだわりが感じられるからだ。

また、彼の他の作品を知らないので分からないが、今回の
作品だけを見ても「双」の概念がよく使われている。
「双」は何を意味しているのだろうか。コンピュータにおけるコピーや生物学におけるクローンを意味しているのだろうか。
しかしそれぞれが格子状の配列と、斜めの格子状の配列になっており、単なる「コピー」でないところが興味深いところだ。

あと、なぜシカなのかはよく分からなかったが、斜めの格子模様を何というのか調べてみると「鹿の子(かのこ)」というらしい。
それを意図していたのだろうか?

今回の展示は点数は少なかったけれど、中身の濃い展示だった。
ソウルの川の北側での展示も種類が豊富でいいけれど、南側での展示の方が厳選されたアーティストの展示が多い。
その分書くことも多くなってくる。
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by matchino | 2012-11-01 20:27 | 展覧会 | Comments(2)