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韓屋の「マル」と「クムマル」のこと

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韓国の伝統住宅に「マル(마루)」という空間がある。日本語でいうと板の間のこと。
マルの代表的なものとしては、大廳(テチョン/대청)がある。韓屋の大きな板の間のことだ。そして、「テッマル(툇마루)」と呼ばれる縁側や、「チョッマル(쪽마루)」と呼ばれる廊下、「楼(ヌ)マル(누마루)」と呼ばれる高床式の楼などのいろいろなマルがある。
このマルは、基本的には1面以上が開いている。西洋建築が紹介され、ガラスなどの新しい材料が紹介され出してからはガラス窓で閉じられるようになってきてはいるが、空間的な類型からいうと、開放された空間だ。
それで、マルという空間は、中でありながら外であるという、境界があいまいな空間。韓国の建築の本を読んでいると、よく転移空間という言葉が出てくるが、このような中間的な、媒介的空間がマルなわけだ。
韓国の伝統建築の特徴の一つがこういった転移空間があるということ。
そして、韓国人はこのような空間が好きだ。
マルに横になって庭を眺めたりするのが好きだ。私も雨の日に韓屋のマルに座って、ただ雨の音を聞きながら庭を眺めていたいと思うことがある。

そんなことを考えながら思い出したのが、私の大好きな建築で、ここでも何度も紹介した「クムマル」。
羅相晋(ナ・サンジン)という建築によって建てられ、忘れ去られて解体の危機に陥ったが、趙成龍(チョ・ソンニョン)建築家によってその価値を見出されてリノベーションされた。
生まれ変わったこの建物に付けられた名前は「クムマル(꿈마루)」。「クム」は夢で、「マル」は、上で説明したマルなのだが、以前、このブログで紹介するときに、何と訳すべきか悩んで、「床」と訳した。それが適切な訳かどうかは分からない。

それではなぜ、この建物の名前に「マル」という言葉を使ったのか。昔はよく分からなかったが、「マル」という空間について知ってみると、その理由がだんだん分かってきた。
マルが中でもなく外でもない空間であるように、クムマルも外と中との境界がない。韓屋に玄関がなく、各部屋に庭から直接入るように、クムマルも特定の入口がなく、いろんな所から入ってその空間を楽しみ、いつの間にか外に出ている。
それから、韓屋のマルや門のフレームに外の風景が切り取られることによって、風景が自分のものとして対することができるように、クムマルでも2階の横長のフレームに切り取られた風景が美しい。
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こういった全ての要素が韓屋から来ているのだろう。それでこの建物に「マル」という韓屋独特の用語を使ったのだ。
なんといってもクムマルと韓屋のマルと似ている点は、そこにずっといたくなる心地よさだ。眺める風景はもちろん、なぜか分からない心地よさが漂っている。
いつか気の合う人たちとここでパーティーをしたり、映画の上映会をしてみたいと思っているが、まだ実現していない。
誰か一緒に企画しませんか…?

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by matchino | 2016-04-22 21:38 | 建築 | Comments(0)
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