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昌慶宮大温室

前回からの続き。さて、「青春男女、百年前の世の中を貪る」の本が生んだ感動的な出会いとは?

うちの家族は、旧正月の連休はたいてい行くところが決まっている。故宮か民俗村、南山とかだ。その日はどこも開いてないし、故宮は入場無料になったりするから。多くのソウル首都圏に住む人たちも同じだ。
でもいつも行く景福宮や南山は飽きてきたので、行ったことのないところに行ってみようということで、昌徳宮と昌慶宮に行ってみることにした。
景福宮の東にあり、昌徳宮と昌慶宮は隣り合わせになっている。伝統的な韓屋様式の建物が並んでいてとても見応えがあるのだが、実は個人的には物足りない。14年も住んでいると韓国の故宮に行きまくっているからだ。それでもよくよく見てみると美しいと思う。
でも、そんな伝統様式の建築だけでなく、西洋式の建築に出会った。
昌徳宮から昌慶宮へ抜け、大きな池を回っていくと、その向こうに白い建物が見えた。

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あ、あれはあの本に出ていた温室だ!
見に行ってみたいと思っていたところ、偶然出会えたので興奮した。

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でも…あの温室だよなあ…?
なんか思ったより小さい…?
実は本をパラパラをめくりながら写真が目についただけで、その部分はまだ読んでいなかったので、これが本当にその建築なのか確信が持てなかったのだ。

後から確認してみると、その建築だった。
昌慶宮の大温室。
細く白い骨組みのペンキがところどころ禿げていて歴史を感じさせる。剥げた部分を見ると木製のようだ。後から知ったのだが、主な部分は鋳鉄で、木を併用しているとのこと。
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入り口のドアには梅のような花の模様がついている。これはスモモの花で、大韓帝国の象徴なのだそうだ。昌徳宮の仁政殿の屋根の上にもこの紋章が付いていた。
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白い骨組みとガラスだけの、曲線を描く装飾が少しあるだけのシンプルな造りだが、とても美しい。
中に入るとまあ、普通の植物園なのだけれど、植物よりは骨組みの美しさに目が行く。
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残念なのは、床のタイル。建てられた当時はレンガだったのが、後にセメントに変えられ、またタイルに変わったというのだけれど、何か安物のタイルという感じ。
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外に出ると、前には西洋式の庭園。春に来たらきれいだろうなあ。
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ここを訪れた時は、基礎知識がまったくなかったのだけれど、後で本を読んでみて、この温室の歴史が分かった。
この温室は、大韓帝国が日本に政権を奪われた後、朝鮮王朝27代王である純宗皇帝を慰めるためという名目で1909年に伊藤博文が造らせたもの。王宮である昌慶宮の建物を壊して、そこに植物園や動物園を造り、市民のための公園にしてしまったのだ。
解放後は動物園はなくなって王宮の建物が復元され、温室も存亡の危機に陥ったが、何とか残されてその姿を留めている。
この温室の設計をしたのは、フランスで園芸を学び、新宿御苑の温室を設計した福羽逸人・農学博士で、施工したのはフランスの会社だという。ただ、福羽博士は農業が専門のため、基本的なシステムの設計だけ行い、実際の建物の設計はフランスの会社が行ったのだろう。
この温室は、韓国にとっては、王宮が日本の手によって踏みにじられたという屈辱の現場だといえる。それを知ると複雑な気持ちだが、韓国の人たちがそのような歴史の刻まれた建築を残してその事実を受容しているように、私もそのような歴史から目をそらさずに、日韓両国の今を生きていこうと思わされた。
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by matchino | 2014-02-16 20:21 | 建築 | Comments(4)
Commented by yukiful-xmas at 2014-02-19 02:31
なるほど・・・ 

昌徳宮には何回か行きましたが、この温室は記憶にないなぁ。
たぶん、ただの温室と思ってすっとばしたんでしょうね。 (苦笑)
matchinoさんの解説があると、見る目もかわりますね。
特に歴史とかは、知る由もないし・・・
写真がキレイなせいか、白い建物がとても素敵に見えますね。
今度行くことがあったら、見にいってみたいです。
Commented by matchino at 2014-02-19 13:22
この日もたくさんの人が来てましたし、解説を聞きながら回っている人たちもいましたけど、この温室まで来ている人は少なかったですね。
これより大きな温室はたくさんあるし、私もこの本を読まなかったら通り過ぎていたかもです。
最近、昔よりも古い建築に目が行くようになって、昨日もソウルを回りながら「あ、ここは今度行ってみないと!」というところをたくさん見つけましたよ。
建築に興味を持つと、そこから歴史に関心が行くようになって、そうなると建築の見方が変わってくる。相乗効果になって面白いですよねー。
Commented by citron7a at 2014-03-21 20:50 x
こんな温室があるなんて知りませんでした。
由来を知ると、複雑な思いになりますね。

ソウルは新しいものと古いものがうまく共存しているな、と
行くたびに思います。
Commented by matchino at 2014-03-22 08:31
わざわざここまで行かないですよねー。
見るべきものは他にもたくさんありますから!
古いものと新しいものとの共存!
そうですねえ。それが今、一番論議をかもしている問題なんです。
昔、東大門運動場があったところにデザインプラザ(DDP)ってのができて、ザハ・ハディドっていう建築家(東京オリンピックの競技場のコンペで当選した人ですね)が建てたんですけど、その建物がこの地域の歴史性を考慮したものなのかということで、バッシングを食らってるんです。
まあ、そういう意味では過去と現在との共存ということを一生懸命考えている都市なんだといえるでしょうかねえ。
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