前回のアニッシュ・カプーア展の続き。
地下の展示室で気になった作品は多い。 この作品、中が空洞になっているが、空洞になっているのか、中が詰まっているのか、肉眼ではよく分からない。すぐ目の前に立っても分からないほどだ。ドーセントの説明によると、反射しない塗料を使った作品の質感による効果であるが、影ができないように照明を調節しているという。 三つのオブジェの前に立つと、濃い青の壁がどんどん増幅しながら迫ってくるような感覚になってくる。 これは、「私が妊娠していた時」という題の作品。壁が妊娠している。どうやって作ったんだろうと気になる。 そして、それ以上に気になるのが、「イエロー」という題のこの作品。深さ3mの穴が掘られた6m四方の黄色い壁だ。穴の底はあるものの、実際より深く、どこかに続いているような感覚になる。イギリスのテートモダンで展示されたカプーアの巨大な作品を思いださせる作品だ。 地下にはステンレススチールでつくられた円形の鏡の作品が二つある。中が凹んだ曲面となっているが、その曲面にかすかな凹凸があり、目の前に立つとめまいがする。 この作品をはじめ、カプーアの作品はオラファー・エリアソンの作品に似ている。鏡や光をつかってイリュージョンをつくりだし、見る者がそこに映り込むことによって作品の一部となっていく。そして、エリアソンの作品は視覚に訴えるものであるのに比べ、カプーアの作品は視覚だけではなく、もっと奥深い感覚の世界まで影響を与えるものが多い気がする。インド出身という事実がそう思わせているのかもしれないが、何かより哲学的、宗教的境地まで表現しているように感じられる。 また、ほとんどの作品に空洞が存在している。私たちは「空洞」として認識しているが、厳密にいうと「空洞」自体は作品ではないはずだ。カプーアは既存の彫刻の概念と反対のものを持ち出して、そのような逆説の概念を表現しているのだ。 これが仏教での「空」の概念を表現しているのかもしれないという気になってくる。そう考えてみると一つだけ空洞がない作品がある。「私が妊娠していた時」という作品だ。でも、「空」という言葉は「腫れ上がったもの」という意味もあるという。中にある空洞ということだろうか。そして、その空洞の中から新しい生命が生まれるのだ。 地下での展示が終わって、いよいよ「ブラックボックス」の中での展示を見る。続きは次回。
by matchino
| 2012-12-25 10:29
| 展覧会
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